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髷に対するこだわり

僕は江戸時代の男の髷が好きである。けれども江戸時代の男の髷なら何でも好きだ、という訳ではない。基本的に僕は月代を剃っている髷は受け付けない。僕が好きな男の髷は浪人髷である。

浪人髷

こんな髷である。時代劇等で浪人役の役者がこうした髷のかつらを被っているから、よく知っているという人もいるかもしれない。そもそも僕が初めてこの髷を知ったのは小学六年生の時(2004年)、大河ドラマの「新選組!」を観ていて、お笑い芸人の矢部太郎演じる阿比留鋭三郎という対馬浪人がこの浪人髷をして登場していた事による。

矢部太郎演じる阿比留鋭三郎

矢部太郎の貧相な顔付きも良かったのかもしれないが、いかにも食い詰めた無頼の浪人といった雰囲気が出ていて当時の僕にはカッコよく映ったのである。そして十二歳の僕は大人になったら浪人髷を結ってみたいと考えたものだったが、悲しいかな、僕の髪の毛は強烈な天然パーマであったので、所詮叶わぬ夢だと感じていた。それに2004年当時、近所の大人達で髷等結っている人は当然いなかったので、そうした点からも浪人髷を結う事は現実離れした行為である事は幼心にもよく分かっていた。

やがて中学校へ上がると僕は大相撲に興味を持った。勿論力士が結っている髷に反応してである。

力士髷

これが大銀杏とは異なり、浪人髷と似ていた点が大きかっただろう。当時の僕のお気に入りの力士は安馬(後の日馬富士)だった。

安馬

ソップ型(痩せ型の事)の安馬は着流しを着ていると力士というよりそれこそ浪人に見えたので、僕は一目惚れした形だった。残念ながら安馬は横綱になったものの、暴力事件を起こして引退してしまったが、僕としては引退して欲しくなった。あの事件に関しては様々な説があるらしいが、僕は白鵬が一番悪いと思っているので。

話は飛躍してしまったが、僕はそんな髷の視点から大相撲を見ていたので、わんぱく相撲等全くやっていなかった癖に中学校を出たら、力士になろうと考えているような不思議な少年だった。ただいくら十五歳の世間知らずな少年でも相撲界はかわいがり等の死亡事故も起きていた事も知っていたし、取り敢えず高校は卒業しておかないとな、と思ったので、力士にはならなかったが。ただおそらくあの時力士になっていたら僕もかわいがり等の暴行を受けて死んでいたのじゃないか。今でもたまにNHKの大相撲中継を観ているとそんな昔の事を思い出してしまう今日この頃である。いずれにせよ、昨今様々な髪型が流行っているのだから、美容院でも髷を結うサービスぐらい行って欲しいのである。

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