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関東めぐり愛④・埼玉大学

私は高卒なのだが、一時期埼玉大学の夜間部に入学しようか迷っていた事がある。それは今から8年前の事になる。2016年の事だ。何故埼玉大学の夜間部なのかと言えば、埼玉大学がさいたま市にある為に地元東村山市から通える距離であった地理的な条件もさることながら、埼玉大学の前身が旧制浦和高等学校であったと云う事情も大きかった。当時の私は山田洋次監督製作の映画「ダウンタウンヒーローズ」を観たばかりで、旧制高校に対して大きな憧れを持ち始めた時期であったのだ。

この記事にも書いたと思うが、私は「ダウンタウンヒーローズ」に出てくる白線帽を被ってマントを羽織りながら、街を闊歩する旧制高校生の姿に一目惚れしてしまったのである。故に私は国立大学の夜間部に入りたいと思い、その前身が旧制高校である国立大学を探したところ、運良く埼玉大学が導き出されたと言うわけだ。ちなみにこの旧制浦和高等学校からは「日本のいちばん長い日」書いた半藤一利氏が卒業している。確か2019年に池袋で起きた大規模な交通事故の犯人である飯塚幸三被告もこの旧制浦和高等学校の出身だったはずだ。

で僕は早速2016年の夏頃に埼玉大学へ行き、キャンパスを見学する事にしたのだが、当然の如くそのキャンパス内には旧制高校的な雰囲気はなく、私服姿の大学生が溌剌とした青春を楽しんでいる様子だった。勿論、見学に行く前から私は既に埼玉大学にはバンカラ的な雰囲気は皆無であろうと予測してはいたものの、実際にオシャレで現代的なファッションをしている埼玉大生に出会うと、少々面食らったものだった。

学食にも寄ったのだが、私が座ったテーブルの端の席にはその年の学祭のミスコンを企画している学生の一団が居座っており、ミスコンの話で馬鹿みたいに盛り上がっていたものだった。何だか自分がバンカラ的なものを期待して埼玉大学に来たのに、「ミスコンの話かよ」と云った落胆がある一方で、それらの盛り上がりは高卒の私に暗い嫉妬とコンプレックスをも惹起させたものである。それもあってか、学食でカレーライスを食べ終えた私は当日貰った夜間部に関する資料を帰り際にはビリビリに破き、キャンパスのゴミ箱に捨てたものだった。

結局私は埼玉大学の夜間部には進学しなかったのである。それに関して後悔した時期もあったが、今ではそうして良かったと心の底から思っている。次回からの関東めぐり愛は神奈川県編に入ります。

ヤフオクで手に入れた非売品の旧制浦和高等学校史


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