この漫画で泣かない巻は無い。『義男の空』の感想。
父親は厳しいイメージの人だけれど、娘の私が娘の目線で知っている寂しさや満たされなさのある人だという事も確か、だと思う。
そんな父親が昔ひときわ怒ったのはスーパーにある「ゲーム」だったという事を未だに「時間の無駄」と解釈して、あるいは「無駄遣い」と受け取っている私は「エンターテイメント」としての「漫画」もいつしか好きでは無くなっていました。「時間の無駄」。
所がですね。
もう、泣かない巻は無い。それ故に子どもが居ると読めないから早起きして、読む、という漫画があったんですよ。
『義男の空』(エアーダイブ)
平たく言えば「生きる可能性」にかけたお医者さんと家族のお話…という事になるんだろうか…いや、違う気がする…
「義男」さんはお医者さんなんですが、産まれながらに病気と闘う子ども達と共に、それでも「生きる事」に立ち向かうんですね…例え可能性が無いと言われても。
「生きる」という事に関して物凄い「火事場のクソ力」的な勢いで、いけー!やれるぞー!!という熱量を全然忘れないんですよ。
作中では仲間と書いて「家族」と読んでいますが、義男氏が自分の過去や思いも「仲間」にしているし、子ども達や親達の生き方まるっと、過去も今も未来さえも全て仲間、そこから願いにも似た「生きる」事への「信念」。
未来という言葉が時間軸だけを示しているのではない事くらい、本を読めば分かります。
思いが体現として、漫画に出てくる人全てに顕れている。そこには嘘が無いから、「ありがとう」の気持ちで泣けるのかも知れません。
はじめのページから本当に「美しい」。
構造も「美しい」。
見た事のないそれぞれの生き方に、でも何処かで触れ合って、それが「可能性」だと知っている。それが「私の生き方」でもあると知っている。
漫画の中の皆が「私たち」になる時。
そして「本当に生きた人」じゃないと知らない世界ではないかと動き出す心の中の何か…
「私も…もっともっと、本気で、生きたい」。