町と人、人と人、すべてのつながり。
6月に月形町にあるツキガタアートヴィレッジに訪れた。
自然が広がる月形町にある小さなアートギャラリー併設の多目的施設。作家さんの個展やマルシェイベント、秋にはキャンドルナイトやキャンプファイヤーを行うなど幅広く活動している。そんなツキガタアートヴィレッジで村長を務める書道家・久保奈月さんにお話をお聞きした。
「ツキヴィ」という名称で親しまれているツキガタアートヴィレッジでの「つながり」とは何なのか。
アートでつなぐ、人と人。
ツキヴィでいう「アート」とは芸術作品のことだけを指すのではなく、人の手で作り出されるすべてのものを指す。
ツキヴィ設立の際に、月形で何か活動している人がいないか探してみると、エディブルフラワーの作家さんやラズベリージャムを作っている方、お菓子を販売している方などさまざまな活動を行っている人たちが見つかり、コンタクトを取り始めたそう。そして、ツキヴィとのつながりが生まれ、お客さんを連れてきてくれることで新たなつながりの連鎖が生まれている。
アートで月形の魅力発信。
アトリエを使用する作家さんがいると月形町の発信につながる。
たとえば、写真家の方だと、町の写真を撮りSNSにアップする。その写真を作品としてみたときに建物や人物が魅力になる。それは、月形町の魅力をアートという作品にして伝えているということだ。
日常的にアートに触れられる、野外展示などが溢れるような…月形町をそのような町にしたい。アートとの一体化を実現するために長期的な視点で目標を掲げているのだそう。
幼少期は気づかなかったこと。
地域の子どもたちがときどき訪れることを利用し、作家が制作している場面を見せることができれば、なんとなく見ているだけでもアートと日常が近い存在になり、これからの人生の一部になるのではないか。子どものころからアートに触れられる機会はとても貴重だ。
アートは生きるために必ずなければならないというものではない。しかし、小さいころから触れる環境を作ることでアートの価値を感じてほしい。
そして、ツキヴィで4月上旬から5月下旬まで約2か月間個展「軌跡、時と」を開かれた雪草さんにお話を伺った。
染織家・葛布帯(くずふおび)作家の雪草さんは、自然光が入り、作品が映えるようなギャラリーを探していた。そんなときに見つけたのがツキヴィだった。
ツキヴィで個展。新たな気づき。魅力よ届け。
札幌で個展を開くのと、月形で個展を開くのでは決定的な違いがある。
それは、地域のつながりをとても身近に感じるということだ。自転車に乗って来るおばあちゃん。月形のこどもたち。聞こえてくる会話がローカルなものでどこか楽しげだ。お年寄りから子どもまでさまざまな人が集まる場所であり、自然と人と人のつながりができている。
個展に訪れた人は月形以外のファンの方や呉服店の宣伝から来てくれた人などさまざま。遠いところからは東京から足を運んでくれたそう。そして、ツキヴィで同時に行われたマルシェイベントからふらっと立ち寄ってくれた人もいた。そのお客さんは、ツキヴィがなければ、個展について知ることのなかった人たちが訪れてくれたということである。
ツキヴィで個展を開くことで、葛布帯について知ることのなかったであろう層にも魅力を伝えることができたのだ。
土地と土地のつながり。
雪草さんとお話している中で、月形町という土地にしばられず、他の地域とのつながりができるとさらに活動を広げることができるのではないかという案が出た。たとえば、アートマップを作ってみるのはどうだろうか。月形から近い美唄市は美術館があったり、当別にも作家さんがいたり…地域と地域の輪を広げられそうだ。アートに限らず、ご飯屋さんマップを作っても面白そう!
開放的な土地とともに。
月形町という自然豊かな空間はとても開放的でゆったりと時間が流れる。この空間と同じように地域の人たちの気持ちをもっと開いていきたい。みんなが知り合いだからこそできること、ツキヴィで知り合ったからこそできること、ツキヴィを取りまとめ役にして大きな輪にしていきたい。このような強い想いがあるのだと久保さんのお話から伝わってきた。
ツキヴィから作家さん、作家さんとお客さん、お客さんとお客さん、お年寄りとこども、アートとアート。月形町から違う土地。すべてがつながっている。これらのつながりを広げるきっかけになる場所、ツキガタアートヴィレッジをこれから見守っていきたいと考える。