後部座席で微睡んでいたい
夏になると
小学生の頃、家族でよくキャンプに行っていた時のことを思い出す。
帰りの車の中、夏の一大イベントが終わった切なさでいっぱいになっていた私は、横ですやすやと寝息をたてながら眠る弟を少し羨ましく思いながら
窓の外に広がる知らない土地の田園風景をただ眺めていた。車の中はクーラーがよく効いていて、思い返すと贅沢な夏の楽しみ方だったように思う。
本当に、私は夏の終わりのあの切なさが苦手だった。
それでも暑い中一日中遊び回った疲労感に抗うことはできず、結局私も眠りにつく、というのが常だった。
目が覚めるのは決まって家の近くのバイパスを降り、普段行っている図書館が見えてきた辺りだった。本当にふしぎなことに、ゆっくりと目を開けるといつもだいたい同じ景色だった。
いつもの場所に帰ってきた安心感を感じ、ふたたび瞼を閉じる。
けれど一度起きてしまったし、家はすぐそこだから眠るわけでもなく
ぼんやりと眺める父と母の背中にただ安心しきっていた。
何かに守られているという漠然とした安心感
特に負うべき責任も無く、ただ勉強をして本を読んで過ごしていた頃が懐かしくて羨ましくて堪らない。
私はまだ自分の足で立って歩いて行く自信がないし、誰かを守れる強さなんてひとかけらもない。
ただ誰かに守られている安心感につつまれながら、微睡んでいたい。
ああ、本当にまだまだこどもだなあ、と思う