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江戸川乱歩「芋虫」を読んで

江戸川乱歩の短編小説「芋虫」を読みました。
Audibleだったので正確には聴きました。

私の性癖について書いた記事から「芋虫」を連想したというコメントをいただいたのがきっかけです。
感想の前に、大変ぞくぞく、ぞっとする体験機会をご提供いただいたことをこの場を借りて御礼申し上げます。うれしかった🤞

「芋虫」の結末がちょいちょい見え隠れするのでご了承ください。

あらすじ

戦争の名誉の負傷により左右の手足と聴覚、発声器官を失ったスナガ中尉は、妻の献身的な介護を受けていた。

時が経つにつれ戦勝による光悦は過ぎ去り、山奥で半ば外界から遮断された環境で過ごすトキコは、いつしかスナガ中尉を「情欲を発散するための道具」として見なすようになる。

手足が無くモノも言わない。特徴的なつぶらな眼と口筆談しか意思疎通の術を持たないスナガ中尉を、トキコは「芋虫のようだ」と思い、歪んだ愛憎が時とともに煮詰められてゆく。


感想など(ネタバレアリ)

本の紹介や考察をしたい訳ではないので、いきなり感想を聞いてください。

「芋虫」と「目隠し」の共通点

「芋虫」と私の性癖(目を隠すことで「個」としての人間性を排除する)の共通点について。

・トキコはただの肉塊となったスナガ中尉に非常に強い情欲を抱く
・私は「人がモノっぽくなる」様子に興奮する

・トキコは、スナガ中尉をスナガ中尉たらしめる最後の砦である眼を潰してしまう
・私は眼を隠す(擬似的に潰している?)

・トキコは絶対に反撃できないスナガ中尉に対し嗜虐心を抱き、遂には唯一反抗的な「眼」に激昂する
・私はそれを自身の性癖と認識していなかったが、トキコと同様「弱者に対する嗜虐心」を確かに持っている(これを思い出したのが一番きつかった。頼むから俺の頭から出ていってくれ)

感情を揺さぶられた描写

・スナガ中尉の二人称が「ハイジン」
→Audibleは読み聞かせなのでハイジンの意味がわからず「どう書くんだ?俳人?当時の言い回しなのかな?」と不思議でしたが、単純に「廃人」だと分かり驚いた。
彼は〜とか、夫は〜、みたいな感覚で廃人は〜と描写されている。
トキコは物語開始時点でスナガ中尉を人として見ていなかったんだと思う。

・やたら身体的特徴の描写が濃い
→短編小説なのに、スナガ中尉の欠損具合に関する描写にやたら文字を使っている。
欠損が著しくもはや「モノ」であるにも関わらず、体温があったり、血の気があったり、脂肪を蓄えている。トキコはそんな様相にこそ興奮しているようにしか思えず、「モノとヒトの間をうつろう様子」が歪みポイントなのかなと感じました。

私に置き換えると、なんだろう。
1時間前まで、表情豊かに雄弁だった人が、今は目隠しをされて、私の腰の高さで口をべろぉって開けて跪くように待ってある。(いるじゃなくてある)
その逆でもいいな…そんな人が1時間後には…って想像すると、脳がじんじんします。

・トキコがスナガ中尉を「棒の生えた肉のかたまり」として情欲の発散のために使用する
→聞いてて興奮してしまいました…。人には言わないでくださいね。
通勤中だったのですが、火照ったものですからコートの前を少し開けて熱を逃がしました。ちょっと気温高かったからね、仕方ないですよね。

物語開始前の時点では、肉塊のスナガ中尉こそ狂ったようにトキコの体を求めていたことがみそだと思います。
そんな振る舞いを見たトキコは「ただの肉塊が生命活動(セックス)しようとしてる」と頭を強烈にバグらせたのかもしれませんね。
(肉塊等の表現や、欠損に対する評価は作中準拠ですが、悲しい気持ちにさせてしまったらすみません)

雑感

・トキコの体を求めて体をよじって暴れるスナガ中尉と、最終的に応じるトキコ。
物語開始前の描写ですが、このあたりは「新生児の性機能が成熟してる世界線の子育て」ってこんな感じなんかなーと思いました。ここまできて引くなよ姉貴。

・庇護欲や母性と、支配欲の間はきっとグラデーション。関係性が煮詰まると自己と他者の境界は溶けてあいまいになる。

・スナガ中尉の「ユルス」の書き置きや、井戸に身を投げる描写は全てトキコの妄想。もしくはトキコが「そう処理すると決めたこと」。

痛みと熱にうなされ視界も奪われたんだ、どうせミミズ団子みたいな字だったんだろう。本当にユルスと読み解けたのか?そもそも本当に書き置きなんて存在したのか?
柱の木目か何かだったんじゃないのか?

書き置きの解釈も随分と自分に都合がいいじゃないか。

本当は「このオモチャで壊れるほど遊びたい」と「もうこんな生活から抜け出したい」がぐちゃぐちゃに混ざってたんじゃないのか。
遊び尽くすために狂乱のなか眼を潰して、実はがっかりしたんじゃないか?
「あ、いよいよ完全にモノになった」って。「もううつろいがない」って。

そんなオモチャもう要らないから、そりゃ捨てるよな。
作中ではぼやかした表現だったけど、眼を潰されたスナガ中尉が自力で井戸にたどり着けるかな。難しいと思うな。
だからお前が捨てたんだろう。
きっと「眼潰したのは想像よりつまらなかったけど、捨てる瞬間は最高のカタルシス」って期待してたんだろ。

さいごに 次のタイトル

2000字を超えたのと、眠くなってきたので簡潔に。
実は性癖に関する記事パート2のタイトルは決めていたんです。最初からね。

ただ「芋虫」を実際に読んだこと
作中の表現に興奮したこと
自身に巣食う嗜虐心を思い出したこと

それらのことから、次の記事を書くのがすこしこわくなってしまいました笑

次のタイトルは「性癖の正体【管(くだ)編】」の予定だったから。

私は芋虫を読んでナマコを想像しました
ナマコは言うなれば管(くだ)が生きてるようなものだ
私は人の管の部分に興奮する(のかもしれない)
おやすみなさい

最後に、素敵な作品を教えてくれて重ね重ねありがとうございます!
みんなでツギハギくんに情報を与えて良い感じに情操教育しよう!

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