はじめて写真展をやるなら(前編)
福島県を拠点に写真家をしている熊田誠です。
2023年5月に、海をテーマにした写真展「海とはなにか」を開催しました。
ギャラリーでの写真展を初めて行いましたが、それまでのプリント、額装、レイアウト、施工、広報について前編と後編に分けて公開します。
【💡こんな方におすすめの記事です💡】
・写真展をいつかやってみたい
・プリント、額装業者でどこに発注するのか
・展示の段取りを知りたい
主にフォトグラファー、デザイナーさんの企画展示の際には役に立つ情報かなと思います。
それではご覧ください!
写真展の開催に向けて
会場探し、寸法出し、展示レイアウトの作成
写真集やブック(プリントをファイルしたもの)など自分の表現したい作品が50点近く集まりましたら、写真展の開催に向けて動けます。
僕のケースでいうと、30点近くが展示できる中規模スペースで且つ、諸経費含め総予算50万円くらいを想定して開始しました。
まずは会場探しです。
WEB上で「ギャラリー、個展会場、いわき市」と検索すると意外にたくさんの会場がヒットしました。
その中で僕は「アートスペース エリコーナ」というギャラリーを選びました。
高い天井で光が全体にまわる建築設計、十分なスポットライトに加え、壁や床材が自然な色合いで、本作の海をテーマとした企画と相性が良かったためです。
また、9日間(設営日含む)利用しても、サラリーマンの半月給与分でお釣りが来るイメージの使用料。リーズナブルです。
早速、会場のオーナーさんに連絡し、下見に行きました。
ギャラリーによっては、平面図、立面図があると思います。
今回の会場では簡易的な図面はありましたが、詳細な寸法が記載されていなかったので、寸法出しからスタートしました。
メジャー、鉛筆、消しゴム、方眼紙があると良いと思います。
本会場は、ピクチャーレールに吊るタイプの展示ではなく、直接壁に打ちして良いところだったので、レールによる制限がありません。
そのため、しっかりと基となる寸法を書き出しておかないと、レイアウト図と実際の配置にズレが生じてしまい、施工の当日に混乱がおきます。
また、寸法を書き終えたら、オーナーさんに会場をどっち周りでお客さんが普段歩かれるか、動線を含めてヒアリングすることも意外と大事です。
プリントの依頼
プリント、額装は本当に選択肢がたくさんあって奥が深いです。
今回の写真展では、プリントと額装は外注で行うことにしました。
自前のプリンターではA3ノビまでしかプリント出来ないのです。
A2ノビ、A1ノビなど大きいサイズのものは、専門の業者に頼む必要がありました。
ちなみに、プリント用紙は発色が良いCANON製 微粒面光沢ラスター、額装にはアルミフレームを採用しました。
早速、プリントについて。
担当してもらったのは、新宿区にあるトーキョーライトルームという大判プリント専門店。
なんと、B0ノビまでのビックサイズのプリントが可能なんです。
紙を持ち込んでもOKですし、自分でPC・大判プリンターを操作することもできます。
こちらの会社のプリンティングディレクターである小松さんがとても腕が良く、僕は事前にA4サイズ(微粒面光沢ラスター)で展示する作品30点分を自宅でプリントして、小松さんに郵送していました。
その際、小松さんに、どこのメーカーのプリンターで何の紙を使い、どのような設定でプリントしたか記載した明細書と写真データをお送りしています。
完全に小松さんのお任せでプリントしてもらいましたが、イメージどおりの色合い、明暗の仕上げになっていて感動しました。
出来上がったA2ノビ29枚とA1ノビ1枚のプリントは、額装会社の㈱カシマに発送してもらいました。
写真家が依頼する会社は都内でも限られているので、「㈱カシマさんのフレームなら何ミリ余裕を持たせますね」など、後工程の話を含めた提案を小松さんからしてもらいました。
額装の依頼
以前、都内にある某額装店にお願いしたら、3割近くの作品が傷だらけで納品になったり、その後のフォローが全くなく、高いわりに対応が塩でした。(運送屋が悪いから、うちは知らないよという理屈だそう)
ちなみに、某〇マト運輸だと美術品専用の運送プランもあるようですが、2022年時点で1口5万円で、仮に30作品あるなら150万円という計算になります。
もし、初めての額装屋に額装品の発送をお願いするなら、運送会社はどこを使って、傷があった場合の補償はどこがするか確認した方が良いです。
そんなわけで、前回の経験を踏まえて、リーズナブルでプロもよく使う東池袋の㈱カシマにお願いすることになりました。
30点とボリュームがあったので、完成まで2週間くらいかかりました。
運送料の150万円は出せないので、福島県いわき市からハイエースをレンタルし、東池袋のカシマへ。
首都高の東池袋を降りて5分くらいの場所にあります。
普段、田舎の広い道路で運転しているせいか、倉庫の前に駐車しようとした際、上手くいかず悪戦苦闘しました。
到着すると、段ボール5箱単位ほどにまとめられた作品が用意されていました。
本来なら、現場で傷がないか確認する必要がありましたが、この日は時間がなく、そのまま引き取ることになりました。
カシマの社員さんが、「なにか気になるところとかあったら言ってください」と言ってくれたのが安心感に繋がったような気がします。
ひとまとまりになっている作品を業務用フィルムでグルグル巻きに。
ある程度動かない状態になったら、ロープを使い車内で固定して出発しました。(固定する際、ロープで箱や作品が傷まないよう、布やいらない段ボール当てた状態で締め上げると良いかもしれません)
自宅に到着後、作品の状態を確認しました。
綺麗な仕上がりで傷も全くありませんでした。
出来れば個展開催の2~3週間前には、自分の手元に傷が無い状態の作品があるのが好ましいと思います。
万が一傷があってプリント・額装からやり直しがあっても間に合いますし、意外と2週間前は広報や足りないあれこれで動けませんので。
前半はここまでとなりますが、いかがでしたでしょうか?
プリントは自前のプリンターやキタムラプリント、額装品は市販のものとかボードに写真を貼り付ける手製のものにすれば、コストカットできます。
ただ、上手くやらないと素人感が出てしまい、マイナスイメージになってしまうデメリットがあります。
裏打ち・業者の額装までしていると耐久力が上がり、展示品を期間終了後に販売できるメリットもあります。
低予算でやるのも、表現によっては必要でしょう。
形にこだわり過ぎるのと堅苦しさとか、窮屈さを人に感じさせることがあります。
ラフにやりたい、型にはめたくない人は自分のスタイルで良いと思います。
それ以外で、お金がないという理由でやりたいことを諦めるのは勿体ないです。
写真展の開催費用なら、クラウドファンディングのように費用を集めやすいシステムがありますので、ご参考までに僕の事例を添付します。
次回の後編では、写真展の広報、設営、展示品の保管、得た気づきなどを書こうと思います。
これからもフォトグラファー、クリエイター、アクティブなプレイヤーに楽しんで頂けるような記事を書きますので、是非noteの登録をいただけると嬉しいです!