ワンピースでスーツケースを担いで山を登った話 #思い出
淡路島を旅行した時の話。
淡路島、鳴門の大渦を観光し、神戸への高速バスの出発まで、残り数時間。
私たちは、大塚美術館を目指すことにした。
だが、美術館へのバスは、待ち時間が長すぎる。
ルート検索をすると、十分歩ける距離だ。
県道を歩けば、何の問題も無さそうだが、ヘアピンカーブが続く。
私たちは、おもむろに「最短距離」をオプション選択して、ルート検索をしてみた。
「所要時間、徒歩15分」
15分ならば、多少道が悪くても問題は無い。
ヘアピンカーブの車道はかえって危険である。
私たちはスーツケースを引きながら大塚美術館へ向かった。
未舗装だが、気軽なハイキングコースレベル。
私たちは、時々スーツケースを持ち上げながら、陽気に先を目指した。
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10分を経過した頃、私たちは、異変に気づいた。
「スーツケースが持ち上がらない。」
荷物の上げ下ろしに、私たちの二の腕が限界を超えたようだ。友人曰く、
「あの時の絶望感は、今もはっきり覚えている」ハイキングコースは、段々険しくなるが、
もう後戻りはできない。汗だくで山道を進む。
スーツケースを必死で引きずり、疲れがピークに達すると、お互いに責任をなすりあい、人間の汚い部分が顔を出す。更に、疲れがピークを超えると、人間は若干おかしくなるらしい。
この状況に、急に笑いが込み上げてきた。
ワンピースを着た汗だくの女性3人組が、ゲラゲラ笑いながら、スーツケースを担いで登山する。
もう、犯罪の匂いしかしない。
すれ違う登山装備のご夫婦と、挨拶しあうが、
ご夫婦の「こっちに来るな」オーラがビシビシと伝わってくる。
このままでは通報されかねない。
私たちは山路を急いだ。
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所要時間15分を大きく上回るも、私たちは大塚美術館に到着した。スーツケースの耳障りなタイヤ音が、今はとても愛おしい。
美術館を見学後、バス乗り場までの移動手段として、迷うことなくタクシーを選択した。
神戸への高速バスに乗り、私たちは、やっと落ち着きを取り戻すことができた。しかし、私達は、あの絶望感を忘れることはないだろう。
もちろん、大塚美術館は何も悪くない。
以上
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