車椅子おばあちゃんのひとり旅?その2
駅員さんに案内していただいて辿り着いたのは東京駅の車いす用待合室でした。
「おはようございます」
「よろしくお願いします」
何組かの参加者の方達が中にいらっしゃいました。
車いすに乗ったご主人と、多分奥様らしき同行者の女性というカップルが二組、車いすに乗ったご主人と、多分ご家族らしき同行者の女性が二人という3人組が一組です。
あらあら、独りぼっちは私だけでしょうか。
皆さんスーツケースを携えていらっしゃいます。
ツアーには慣れていらっしゃる感じの方達ばかりです。
私はというと、たった一人で大した荷物も持たず、初参加の挙動不審。
なんだかちょっと場違いな感じで落ち着きません。
「三日間一緒に旅行できるかな、なんか孤独っぽい」
と内心めちゃくちゃビビりつつ「よろしくお願いします」と、
精いっぱいの笑顔でごあいさつしました。
ツアーの添乗員さんが見えました、若い女性の方です。
「あっ」以前、日帰りのユニバーサルツアーに娘と一緒に参加した時の添乗員さんでした。
「おひさしぶりです」
「横浜のオペラ座の怪人のツアーに参加させていただいたんですけど」と声をかけるとすぐにわかってくださり、ニッコリ笑顔で
「おひさしぶりです、よろしくおねがいします」と言ってくださったのです。そのとたんに安心感で体の力がちょっぴり抜けた気がしました。
「皆さんおはようございます、これから3日間ご一緒させていただきます」
「よろしくおねがいします」
そんな風にあいさつを交わしているうちに駅員さんが迎えに来られました。
「では、ご案内します」
制服姿の駅員さんを先頭に車椅子3台と同行のみなさんが列になって行進です。
「今日は特別に関係者しか通れない、昔の東京駅の地下を、煉瓦づくりの通路でご案内しますよ」と説明され、
「わぁ、すご~い」と歓声が上がりました。
方向音痴の私ははぐれないように必死で車いすを漕ぎ、わくわくしながら後に続きます。
参加者のなかの三人組のご家族、お父様は「パパさん」と呼ばれて、大きな電動車いすに乗った体格の良い方です。お母様は気さくな感じで、しっかりご主人に付き添っていられます。娘さんはとても明るい楽しい方で、この旅の始まりをとても素直に楽しんでいられるようです。
古いレンガの壁や天井、ちょっと薄暗い通路をきょろきょろ見回しながら物珍しげに進み、新幹線のホームに到着しました。
ホームと車体の間にスロープがかけられ、次々と車椅子が乗車します。
「車いすスペースってそんなにあったかなぁ」
そう思いながら中へ入ると、パパさん以外の車椅子の方は車椅子を降りて座席に移られていました。
私は事前に、「自力では座席に移れないので、車いすのままの乗車を希望します」とお願いしてありました。
が、しばらくすると添乗員さんが申し訳なさそうに話しかけてこられました
「すみません、どうしても車いすから移れない方が次の駅で乗車してこられるんですが」
「お手伝いさせていただいてよろしければ、座席に移っていただけ頂けないでしょうか」とのことでした。
添乗員さんは気を使われて大変ですよね
「ぜんぜんいいですよぉ」「お手伝いお願いします」
ということで、抱えて頂き座席に移りました。
「こっちのほうが、旅の気分出ますねぇ」
気分上々な車椅子おばあちゃんです。
新幹線がゆっくりと進み始めました、いよいよ旅が始まりました。