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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語②

きっと来年も不合格

「行ってきま~す」
「いってらっしゃ~い」
「行ってくるね~、お昼ご飯テーブルの上にあるから~」
「は~い、行ってらっしゃ~い」
 
両親と兄と妹
朝みんなが出かけてしまうと、がらんとした家にひとり
し~んと静まり返った部屋
あ~あ、学校にいたときは今頃
「おはよう!」「おはよう!」って
さあ、今日も一日がはじまる!
そんな時間を過ごしていたのに
 
でも、現実は
一人では何もできず、外へも出られず、何もする気にならない。
家族に心配されないように、気を使わせないように
表向きはいつもの通りポジティブに
「また、勉強して、来年も受験するね!」
「がんばる!」
と言って、通信教育の受験勉強を始めていたけれど、
養護学校では、
「私は、あの子たちとは違う。優秀なんだから普通に大学に行く」
「施設になんか入らない、職業訓練なんか受けない」
といつも心の中で思っていたのに、結局どこへも行けず、在宅障碍者だ
 
毎日をどうやって過ごしていたのかほとんど記憶にないのだけれど
ある日ふと考えた
「?」
「?」
「?」
 
このままではきっと来年も不合格
 
車椅子で通える大学あるの?
超優秀な成績で合格したら、設備も整えてもらえるかもしれないけれど
「ありえないし」
万が一合格したとしても、どうやって通うの?
まさか、毎日親に送り迎えしてもらうの?
いや、そういえば大学の学費っていくら位かかるんだろう?
入学金は?
受験料は?
通信教育のお金は?
この時まで全く考えていなかったことが次から次へと頭に浮かんできた
 「なんてこった~」

何も言わずに、やりたいようにさせてくれていた両親に
今はもう言えないけれど、心から感謝です。


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