半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語⑬
車椅子担いで「渡っちゃえ~」?
旅に出ました
北陸、金沢、能登半島2泊3日
朝の京都駅のホームです。
若いイケメンの駅員さんに車いすを押してもらって
舞い上がってます。Sパイセンとわたし。
これが、間違いの始まりでした
東京駅で新幹線に乗る前に旅費をATMで引き出す予定でしたが
何故か
「京都駅でおろせばいいよ、時間あるし」
「あ、そうだね」
ところが、京都駅でイケメン駅員君に出会ってしまい
ぼ~っとしたまま
「ありがとうございました」
「いってらっしゃ~い」と
金沢に向かう電車に乗ってしまいました。
当時のATMは、今ほど便利ではなく私達の銀行のカードは
この先全く使えなかったのです。
手持ちの現金は二人合わせても少ししかありません。
金沢の駅に降り立ち、初めてお金がおろせないことに気づきました。
「え~っ!」
「どうしよう」
「どうする?」
途方に暮れたふたり
「あ、でも」
「帰りの旅費と宿泊代は旅行会社に支払ってあるから大丈夫だよ」
「よ~し、予定決行」
かくして、車椅子女子と山形美人の「貧乏北陸ツアー」が始まりました。
能登の輪島駅に降りた時には
小雨が降っていました
その日の宿までは少し距離があります。
「どうする?」
「歩いていくしかないよ」
「いくよ!」
車いすを押してSパイセンが歩き始めました。
周りには観光客らしき人達、そしてタクシー
一人の運転手さんが声をかけてきます
「どこまで行くの」
「雨降ってるよ」
「乗ってかないの」
私たちは
「大丈夫です!」
「傘ありますから!」
お金がないとは言えず
黙々と歩き出しました。
前の晩はホテルに素泊まりだったので
朝、近くのお店でモーニングセットを食べただけ
お昼は抜きでした
「おなかすいたね~」
「大丈夫、旅館につけば2食付き」と
小雨に濡れながら黙々と車椅子を押して
予約してある旅館を目指したのでした。
翌朝、
朝食のご飯はお櫃をお代わりして
お昼ご飯用におにぎりをたくさん作りました
それを持って、輪島の漁港で小さい蛸の漁を見ながら
Sパイセンが
「仕事辞めて、結婚する」
と打ち明けてくれました。
あおはるじゃ
この旅でもう一つ忘れられない事件があります。
たぶん、京都駅ではないような、
金沢駅だったでしょうか
記憶は定かではありませんが
ここは駅のホームです
「あのでんしゃにのりたいんですっ」
向かい側のホームを指さして
Sパイセンが訴えます
「いいや、渡っちゃえ」
駅員さんが、私を抱えて、
もう一人の駅員さんがは車いすを抱えて、
Sパイセンは荷物を抱えて
ホームからホームへ線路を横切ったのです!
今そんなことをしたら、即SNSで叩かれて、警察に捕まって、
大変なことになってしまいますが
当時は駅にエレベーターなどほとんどなく
向かい側のホームへ行くには
車いすを何人かで担いで階段を上がって
また下りなければならなかったのです
で、
「いいや、渡っちゃえ」
ということになったのでした
いい時代でしたね
この旅での出来事すべてが、
今の私の旅行好きの原点になったのだと思います。
なにもかもワクワクして
楽しくて
キラキラした思い出です。
Sパイセン、感謝です!