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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊳

「毎日こんなに幸せなことにあふれていた」


看護師さんがベッドのカーテンを閉め
肩をさすり、手を握り、寄り添ってくれても
子供のように泣きじゃくるしかありませんでした。
 
どれくらいの時間が過ぎたのでしょう
ベッドに横になり、ボーっと天井を眺めていました。
 
「まだ初期だから、手術してとってしまえばいいんだよね」
 
でも、右手が使えなくなったら
一人でトイレにも行けない
車椅子も漕げない
車も運転できない
ご飯も作れない
洗濯も干せない
お風呂も入れない
何もできないじゃん
子供の世話はどうするの
何も出来ないママって…
 
「これからいったいどうなるんだろう」
 
がん細胞がリンパに転移していたら
身体中にがん細胞が飛び散って、死んじゃうんだ・・・
そんな数日が過ぎました
すると、
スーパーハイパーポジティブシンキングが
むくむくとよみがえってきたのです
 
負けてたまるか!
絶対に勝つ!
乳がん克服へ!
またまた、挑戦の始まりです
 
さて、
泣いても、悩んでも
がんは消えてくれません
現実は変わりません
 
手が使えなくなって
何にもできなくなったら

仕方がないから
その時考えればいいし
 
がん細胞がリンパに飛んで
全身に転移して死んじゃうなら
「時間が無い」
 
どうなるかわからないことで
嘆き悲しんでいるのは
時間がもったいない
 
そう思うことにしたら
なんだか
「よし!」
という気持ちになってきたのです
 
手術の日程が決まるまでは、何もすることがないので
家に帰れることになりました。
めそめそしていられません
 
大切な、大切な
「普通の日常」を過ごせるのです。
 
朝起きて、朝食の支度をして、
娘たちを起こし
「おはよう」
「いってらっしゃい、気を付けてね」
と送り出せる幸せ
洗濯をして、思い切り干せる幸せ
車でお買い物に行き、喜ぶ顔を想像しながら
夕ご飯を考える幸せ
「おかえり!」
と迎えて、その日の出来事をいろいろ聞ける幸せ
一緒にお風呂にはいれる幸せ
 
毎日こんなに幸せなことにあふれていたと
気づけた幸せ
 
ある日、ひさしぶりにママ友たちとランチに行きました
ファミリーレストランに集まって
たわいもない普通のおしゃべりに幸せを感じていたその時
「ブーブーブー」
携帯電話のバイブがなりました。
 
「はい」
慌てて席を外して、ファミリーレストランの入り口で電話に出ると
「○○さんの携帯電話でよろしいですか」
「はい、そうです、○○です」
「こちら、○○大学病院です」
「今夜、先生から説明がありますので、ご主人と一緒に病院へお戻りください」
 
ついに来た!
宣戦布告だ!
受けてやろうじゃないか! 

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