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車椅子おばあちゃんのひとり旅?その13

素晴らしいライブが終わり、興奮冷めやらぬ人々の波は台風が近づいている荒れ模様の夜の街へ流れ出ていきます。
その中を私も車いすを漕いで進んでいました。

「大丈夫ですか?押しましょうか?」

大勢の人が感想を言い合ったり、このあとの予定を打合せしたりしている話し声の中、突然頭の上から女性の声がしました。
振り返ると1人の女性が遠慮がちに私のそばを歩きながら見守っていてくださっていました。

「ありがとうございます」
「すぐそこの通路までなんですが、お願いします」と私がうなずいたら、その方は嬉しそうに車椅子を押してくださいました。

「おひとりですか?」
「ステキなコンサートでしたね」

少しお話をしながら進むとすぐにホテルへ続く通路に出ました。
「私はここで、もう大丈夫です」
「ありがとうございました」

お礼を言ってお別れしました。
コンサートの感動と同じくらいうれしかったのを覚えています。

さて、小腹がすいてくる時間です。
でも、ホテルのレストランはもうラストオーダーが終わってしまっています。
初めの計画では、ちょっと一杯、軽く何かをつまんでゆっくりしたいなあ、と思っていましたが、
いざとなると一人でバーや居酒屋へ入っていく勇気が出ません。

「どうしようかなあ、ルームサービスもなかったよね」
「お腹もすいてるし、ビールものみたいなあ」

行ってみる?ホテルのバー、車椅子で?ひとりで?
やっぱりむり~、どうしよう、などなど考えを巡らせていたら、

あ、そういえば、コンビニがあったはず!
会場へ向かうとき通ったこの通路にローカルなコンビニがあったことを思い出しました。

しばらく進むと、ありましたローカルなコンビニ。
スーパードライを1缶、つまみにナッツとスルメイカ、

新潟だからおにぎりもおいしいかも。
いそいそと買い込んでホテルの部屋へ戻り、重たいドアをやっとの思いで開けて中へ入りました。

「ふ~っ」ホッと一息です。
戦利品をテーブルに並べ、シングルルームの窓から外を見ると、雨模様の中、信濃川に映る灯りがみえます。道路にはコンサート帰りの車の列も遠くまで続いています。

シングルルームからの夜景

わあ、私一人旅だ~かんぱ~い!
一気に飲み干したスーパードライの美味しかったこと!
おにぎりは夜遅かったせいか、硬くなってしまっていて期待外れでしたが、とっても幸せな気分で1人のみを満喫、新潟の夜は更けていきました。

帰りたくないなぁ、もう一晩泊まりたいなぁと思う車いすおばあちゃんでした。


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