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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉟

「まんまと、作戦成功です」


♪おかあさんたち、みてみてきょうは
うれしいうれしいそつえんしき~♪
 
毎日、長女が卒園式の歌の練習をしています
私はそれを聞きながらいつも必ず涙ぐんでしまうので
みんなに気づかれないようにごまかすのが大変でした。
 
♪こんなにおおきくなりました、もうすぐいちねんせい♪
 
♪ほんとにこんなに大きくなって、入園した頃思い出す♪
小さかったあなたが、もうすぐ一年生♪
 
卒園式の記録を残したいと思っていました
でも、ビデオ撮影は自分で出来ないし、
夫は仕事で出席できないし
おばあちゃんにも無理だし
なにかいい方法ないかなぁ
 
そうだ
思いついてしまいました
テレビ局が取材に来ればいいんだ
そしたらプロの編集で、カッコイイ卒園式の記録が残るし
オンエアを録画すればいいんだ
自分天才
 
ということで、
地元の超ローカルなテレビ局に匿名で取材依頼です
とりあえず、電話をかけてみました

「はい、○○テレビ局です」
「えっと、取材のお願いなんですが」
「担当と変わります。お待ちください。」
しばらく待つと
「はい、お電話変わりました」

「あの、幼稚園の卒園式の様子を取材していただけませんでしょうか」
「今年から新しい形式で、お母様に感謝を伝えるために・・・」
と適当に情報を伝えて、一応は仕込み完了です
こんなことでテレビ局って取材に来てくださるのでしょうか
来るかなぁ
来ないよね
 
いよいよ卒園式の当日です
例によって、よっこらしょっと車から降りて
車椅子で園庭に入っていきました
「あ、いた」
まんまと、作戦成功です
撮影クルーがいました
お母さん方がざわついています。
 
桜の花がほころびかけた園庭をとおりぬけ
いよいよ卒園式が始まりました。
 
♪さあ、喜びの笑顔を見せて
お祝いの言葉を送ります
おめでとう、ほんとに
うれしい日です♪
 
感動の涙、涙の卒園式が終わり暖かい春風の中
園庭へ出ると
 
インタビューが始まっていました
そこへ、車椅子ママ登場
絶好のターゲット
すぐにリポーターが近づいてきました
(しめしめ)
 
すましてインタビューを受け
その様子が長女の晴れ姿とともに、
ばっちり放送されたのです
素敵な卒園式の記録が残せました
ありがとうございました、感謝です
 
長女は小学生に
次女は年中さんになる
1998年4月はもうすぐそこです
 
 ところが、
それはあまりにも突然でした。
1999年の早春
思ってもいなかった試練が待ち受けていたのです


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