車椅子おばあちゃんのひとり旅?その20
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静岡県掛川市『駄菓子屋横さんち』を訪ねて・・・
ウイ~ン、ガリガリ。ウイ~ン、ガリガリ。
電動車いすは空回りするだけで、1ミリも動いてくれません。
「え?」
車いすの後ろについている転倒防止用のキャスターが歩道と車道の段差に引っかかってしまったのです。
「やばい」恐れていたことが起きてしまいました。
最高気温40℃の炎天下、助けを求めようと周りを見渡しても人影はありません。
「わ~、このままだと熱中症で死ぬ」
命の危険を感じました。
新聞に載るかも。娘たちが責められるかも。なんて無謀なことを、熱中症警戒アラートが発令されていたのに。
これは大変なことになってしまう。
そんなことが頭の中でグルグルと廻っています。
何とかしなくっちゃ。
誰か来ないかな。
大声を出してみようか。
こういう時に限って車は1台も通りません。
もうろうとした頭で無意識に電動車いすのレバーを操作しながら身体を大きく動かしてみました。
すると、キャスターがずれたのか、何度か身体を揺らしているうちに
車いすが前へ動いたのです。
よし!
急いで日陰に入り、水分を補給して一息つきました。
「あ~助かった~」
なるほど、こういう時はこうやって車いすを揺らせばいいんだ
と、一つ賢くなりました。
気を取り直して前を見ると目指す掛川城が姿を現していました。
次の交差点を右へ曲がれば道沿いに『駄菓子屋横さんち』があるはずです。
どうにかこうにかたどり着けました。
お店は午後1時開店とのことで、店員さんがお店の前に旗を立てていらっしゃいました。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。どうぞどうぞ中へ入ってください」
優しそうな年配の男性が笑顔で迎えてくださいました。
「初めまして、横さんと2時にお約束させていただいているんですが、ちょっと早すぎちゃって」
「いやいや、かまいませんよ。どうぞゆっくりしていてください」
「もしかして、きな粉棒を注文されてる方ですかね」
「あ、はいそうです」
さっきまでの命の危機は何処へやら、すっかり癒されてお店の奥まで案内していただきました。
なんとそこにはアイスクリームのケースが!
昔、よく店先などに置いてあった、自分で開けるケースです。
そして中には、メロンアイスや、パイナップルアイス、玉子の形のミルクアイスなどがキラキラと輝いていました。
私は迷わずメロンアイスを取り出して、「これ下さい」と店員さんに差し出しました。
そして、その場で木のスプーンで一口、二口、三口・・・緑色のメロンの形の容器はあっという間に空っぽになりました。
懐かしくて、美味しい忘れられないメロンアイスです。
お店の中は車いすでも手が届く高さに商品棚が作られ、懐かしい駄菓子がきれいに並べられていました。
小さな可愛い買い物かごを膝にのせて、あれこれと懐かしく大人買いを始めた車椅子おばあちゃんです。