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最後から2番目の「恋物語」じゃなくて「挑戦物語」です。65

駅に着きました、もちろんバスはちょうど発車時刻です。
次のバスに乗るためにはこのあと、1時間待たなければいけません。
お買い物でもして時間をつぶそうかと思いましたが、駅ビルのショッピング街はもうしまっています。開いているのはイオンの食料品売り場だけです。「ここで1時間はちょっとねぇ」
さらに、天気予報を見ると数分後にはまた雨が降り始めそうです。
仕方がない、タクシーで帰ろう。
そう決めてタクシー乗り場へ向かいました。

電動車いすで駅前の広場を走っていると、タクシー乗り場には客待ちのタクシーがずらり並んでいました。
「よっしゃ!これだけいれば一台くらい車いすで乗れる車両があるんじゃない」
私は勇んでタクシー乗り場へ、先頭のタクシーはジャパンタクシーでした。このタクシーは車いすのまま乗車できることになっています。

都内や、観光地など私は何度も利用したことがあります。

先頭のタクシーに近づくと運転手さんが降りてこられました。

「ご乗車ですか」
「はい、でも車いすのまま乗りたいんですけど」
「お手伝いしますよ、このまま持ち上げればいいんですね」

と、電動車いすごと私を持ち上げようとします。
ひえ~!

「いや、これ相当重たいんで無理だと思います。他の車で車いすのまま乗れる車両ありませんか」
「そうですか、ちょっとまってください」

運転手さんは困ったように後ろに並んでいた少し大きめのワゴンタクシーに声をかけ、そして、すぐに戻ってこられました。

「今ちょうど車いすで乗れる車ないんですよ」
「申し訳ありません、お手伝いしますので、無理ですか?」
私はどうしようかと思いましたが、仕方がないので
「じゃあ、乗り移りますのでお手伝いお願いします」と、

そう言って車に近づいたものの座席が高くて乗れる気がしません。
助手席の背もたれにしがみついてどうにか立ち上がったものの
そこから動けなくなってしまいました。
運転手さんはどうしていいかわからずにおろおろしています。

「すみません、ちょっと持ち上げてください」
「わかりました、こうでいいですか」

運転手さんが身体をもちあげた瞬間にバランスを崩して、私は後部座席にひっくりかえってしまいました。
やばい、起き上がれません。
ひっくり返された亀のように動きがとれず、もがいています。
「すみません、すみません、大丈夫ですか」

大丈夫じゃありません、しばらくもがいてがんばり、やっとの思いで起き上がりシートに座れました。

次は車いすのたたみ方の説明です。
60万円近くする大切な電動車いすが壊れてしまっては困ります。
ひとつひとつ手順を説明して
「かなり重たいです、大丈夫ですか」
「いや、重たいですね」
そういいながらなんとか荷物スペースにのせられましたが、私はもうくたくたで、息も絶え絶えでした。

少し待っても車いすのまま乗れるタクシー呼べばよかったと後悔している
車椅子おばあちゃんです。
疲れました・・・

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