半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㉗
「エレベーターに足をはさんじゃった!」
次女が産まれてしばらくしたころに、
夫が仕事に行っている平日に、義姉が知人を連れて迎えにきて
義母は以前住んでいた街へ帰っていきました。
私は、娘二人の世話でなにも手伝えませんでしたので
昼食にせめてもの気持ちで出前を頼み
うな重をお出ししておもてなしをしました。
けれど、義姉達の冷ややかな対応が今でも心を暗くさせます。
おそらくは、
「嫁に追い出された」
という事になっていたのでしょう
義母が出ていくだけでこんなにつらい思いをするなんて、
もし離婚などということになったら、どれだけ心が傷つくのだろうと
思わされた経験です。
4人と1匹の生活が始まりました。
夫は「九州男児」などと言っていられません
目の前に二人の娘と車椅子の妻と1匹のトイプードルがいるのです。
そんなある夜、事件は起こりました
長女はパパにお風呂に入れてもらい、パジャマを着て
次女を車椅子の膝に乗せ
「さあ、寝ようね~」
と2階の寝室へ行くためにエレベーターに乗っていた時
長女が叫びました
「あ、あ、あ~っ」
「どうしたの」
「あしが、あしが、」
驚いて、私はとっさにエレベーターの停止ボタンを押しました
当時の我が家のエレベーターは、
今のようなちゃんとしたホームエレベーターではなく
荷物を運ぶリフトのような作りのものでした
安全装置などついていません
長女の片足がエレベーターと壁の間に挟まってしまったのです
慌てて下りのスイッチを押して足を外しましたが
かなりひどいけがです
「パパ、○○がエレベーターに足はさんじゃったから、すぐ出て」
お風呂場でシャンプーだらけの夫に伝え
急いで救急車を呼びました
次女はとりあえず二階のベッドに寝かせ、
救急車を待つ間に実家へ緊急出動要請
「○○がエレベーターに足はさんじゃって、今から救急車で病院へ行くから」
「パパが家で○○(次女)見てるから、来て」
救急車が到着して、状況を説明し、私は車椅子のまま救急車に乗せていただきました。
市内の救急病院へ
「だいじょうぶだよ」
「なんさいかな」
「2さい」
長女は泣かずに、救急隊員の問いかけにしっかり答え、
救急隊のかたを感心させていました。
幸いにも、骨折はしていなかったようですが
傷は今でもうっすらと残っているほどです。
「ほんとに、ごめんなさい」
治療が終わるころに夫と母が次女を連れて病院に駆けつけ、そのまま実家へ
翌日から通院が始まりました。
「おはよう」
毎朝、妹が実家まで迎えに来て
車で片道40~50分ほどかかる自宅近くの整形外科まで
私の代わりに長女を連れて行ってくれました
長女は私の妹が大好きで、ほんとの親子みたいに仲が良かったけれど、
この時は、朝迎えにくると嫌な顔をして逃げるようになってしまいました。
それでも
「おはよう」
「いくよ」
と、なんとかなだめすかして、何日も、通院させてもらい
どうにか歩けるようになり、数週間後にやっと自宅へ戻りました。
実家の両親、妹にはほんとに、感謝です。