美容室の怪①
その日は雨が降っていた。雨の日は、髪の毛がいい感じにならないから、イヤだな。そう思ったけれど、わたしは、友人から紹介された美容院に行くことに決めた。
少しの雨だし、天気予報では、晴れと言ってたから、そのうちやむだろう。
わたしが紹介された美容院は、特に芸能人御用達のようなオシャレな店でもない。むしろ、オッサンがいくような安さである。
わたしだって、27歳の女性のハシクレ。そりゃ可愛くありたいけど、お金がないものは仕方ない。
安い美容院でカットしてもらって、あとは日々の努力で補うしかないのである。
1800円でカットしてもらえるのだから、多少の愛想悪さなど、色々あるのかな、などと心配していたわたしをよそに、予約した時のお店の声は、明るかった。
「はい!!ハリセーヌです。ご予約?ありがとうございます!お名前お伺いしまくりボンバーですが、良いですか!?」
お名前、お伺いしまくりボンバー……?
なるほど。愛想悪さはないけれど、ウザさはある。
しかし、1800円でカットしてもらえるのだから、仕方ない。シャンプーは別なのだろうが、それぐらいは我慢しないといけない。
「あ、えーと、橋本です。明日ってお願いできますか?」
「明日?明日は4時から5時なら空いてますよ〜。どうなさいますか?予約しまくりボンバーですか?それとも予約しないことを強さだと勘違いしますか?予約しないことは、弱さです!あははは!」
「あ、えーと、4時によろしくお願いします」
わたしは、イヤな汗をかいて、電話を切った。
予約しないことは弱さ?
なんなんだろう。髪の毛を切ってもらってる間、ずっとこの感じで喋りかけられるのだろうか。
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