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第一回:初心者から始める物語の作り方 ~善行のロジック~

 ここで紹介する方法は、物語が全く作れないという人がある程度物語を作れるようになるためのガイドです。
 料理でいえば、料理を作ったことのない人にカレールーを使ったカレーの作り方を教えるようなもので、中級者が上級者になってお金が取れるようになるような性質ではありません。

 しかし、どうやっても物語が作れない、と悩んでいる方にぜひ知ってもらいたいことを書くのでよかったらご覧ください。

 なお、これは基本的にハッピーエンドで主人公が最終的に幸せになる物語のロジックでありバッドエンドの場合には当てはまりません。

 とりあえず全三回で主要な三要素を上げていきます。まずは一つ目です。

 これから二つの例文を上げますので、どっちかより物語的か考えてみてください。

A『これから面接試験なので、父に頼んで面接練習を念入りに行った。そのおかげで面接はスムーズに進み会社に受かった』

B『面接会場に行く途中の電車で座っていると疲れてそうな老人がいた。席を譲ると、なんと面接する会社の社長で面接を飛ばして合格出来た』

 さて、どちらが物語的でしょう。面白いとか自分の好みとかは別に判断してください。


 それでは答えを言います。ズバリ『B』です。


 現実的な感覚では正しいのはAなのですが、物語の世界ではBのようなことが普通であり物語的なのです。
 物語が作れない人というのは、Bを構成する要素が足りてないのです。
 もちろんBを構成する要素が入っていればプロになれるわけではありません。あくまでBの要素はカレールーであり、それを使えばカレーは作れますが、お金を取れるようなお店のカレーが必ず作れるわけではないです。
 しかし、このカレールーが入っているかどうかで物語になるか分かれます。




 まず、前提として、物語では、『目的を直接解決してはいけない』のです。

 例にあげたものでは、会社に受かることが目的ですが、そのために面接練習をするというのは、現実では至極まっとうなことですが、物語の世界ではNGなのです。老人に席を譲るという一見関係ない善行を行うことで、その報いとして会社に合格するのです。

 これは物語の多くに共通する基本的な教義です。童話や昔話でも、金銀財宝は働いて得るものではなく、善行を行った正直者の貧者に与えられます。女の子を攻略する恋愛美少女ゲームでも、女の子を直接口説く作品は少なく、女の子の悩みを解消してあげると、そのお礼として恋愛関係になります。少年漫画やハリウッド映画でも。人気や自信、美女を手に入れたい主人公は、そのために行動するのではなく、何か別の行動を行った結果、それらを手に入れます。

 特にハリウッド映画では、自信の回復や家族の信頼を取り戻したいなど、主人公が本当に成し得たい心の問題である内的問題と
テロリストの制圧など、世間を騒がしている物理的な事件である外的問題が別個にあり、外的問題を解決することで内的問題が解決するようになってます

 そのためハリウッド映画では自信を取り戻そうとして見栄を張ったり、家族との仲をとりなそうをする行為はことごとく失敗に終わり、何か大きな事件を解決すると、そのオマケとして自信や信頼を取り戻すのです

 あるいは逆の場合もあります。クリエイター漫画などで、よい作品が作れない主人公が、悩みをふっきたり、友情を得ることで作品が作れるようになる話もあります。
 これは内的問題を解決したオマケとして外的問題が解決しています。

 要約すると『物語は人間的に正しい行いをして、それが報われる因果の流れを書いた話』であり『何か別の事件を解決することで間接的に問題を解決するもの』なのです。
 ということで物語を作るときは、直接問題解決せずに、善行をすることで巡り巡って、間接的に問題が解決するようにするといいでしょう。

 具体的にどうやって話に応用するかを説明します。基本的に、何かを欲しがったり、何かに悩んでいる場合は直接解決してはいけません。物語をつかさどる因果律は無欲や善行を推奨しており、欲をかいてる人間や自分ことで精いっぱいの人間を応援しないからです、

人気や信頼、金銭や魅力的な異性、悩みからの解放などを欲している場合は、何か別の事件を解決して間接的に手に入れるようにしましょう。

 どうですか? しっくりきましたが?

 もちろんこれに当てはまらないケースもあります。そういった第二、第三のケースは次のコラムで書きます。

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