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第三回:初心者から始める物語の作り方 ~スポコンのロジック~
今回で物語の作り方のコラムは最終回になります。
前回は強いほうが勝つ、ヒーロー物のロジックを説明しましたが、今度は練習して勝つ場合、スポコンのロジックを説明します。
古典的な多くのスポーツ漫画がこれに属しており多大な練習をして強敵にかつジャンルです。
善行が報われるというよりも、練習や工夫などの努力が報われて勝利する場合に働くロジックであり、ヒーロー物と同様に目的に向かって直接的なアプローチをします。
今回も例文を上げますのでどっちが物語的か考えてみてください。
A「サッカーが得意のなのでサッカー部に入ってエースになった」
B「背が低いがバスケが大好きなので練習しスリーポイントの名手になった」
さあ、物語的なのはどっちでしょうか? 判断してください。
それでは答えを言います。これも『B』です。
Aは現実なら至極当然のことで、なんら問題がないでしょう、ですが物語的でドラマティックなのはBの方です。
これには人間が人間を応援するときの微妙な心理が影響しています。後半部分で、そのロジックを説明しましょう。
まず、これも、直接的に問題を解決してます。練習してスリーポイントの名手になりました。でもこれも、第一回目の結論と違って、直接的な行為が許されるシチュエーションです。
なぜかというと『弱者の努力は許される』のです。
強者や普通の人間がよりよい状態を目指して努力することを欲として因果律は応援しませんが、弱者が努力してよりよい状態目指すことを因果律は応援します。
よくビジネス漫画とかクリエイター漫画など、立身出世系の漫画でやりがちな失敗なのですが、才能のある人間や普通の人間が、ただ利益のために成功する話は物語性が低いのです。
それらはヒーロー物のように何らかの大義のために活動するか
今回のように、何らかのハンディキャップを負った弱者が自助努力によって、それを撥ね退けるようなロジックが必要なのです。
繰り返しますが、強者や普通の人間が努力してよりよくしようとしても、因果律は応援しません。読者も、何も困ってない人間が自身の利益のために努力しても、それを心から応援することはできません。むしろ恵まれた者が失敗するところを望むでしょう。
強者や普通の人間は第一回のように善行を積んで間接的にそれを手に入れるか、第二回のように大義のために活動しないと応援されないのです。
旧来のスポコン漫画が金持ちや才能のある人間が敵なのは、ルサンチマンの解消という面もありますが、それらを倒す成功者を貧乏人や凡人などの弱者にすることで、読者が素直に共感や応援でき、新たなルサンチマンの対象としないようにするためもあります。
もちろん、それらは今では廃れてしまい、スポーツを通じて何かを成す話や、チームのエースがヒーロー的に活躍する話が興隆しましたが、基本的には努力や工夫で幸せになる場合は主人公が弱者である必要があります。
というわけで、スポーツ物や立身出世物など、強くなったり成りあがって幸せを掴むものを作る場合は、主人公を弱者にする必要があります。強者や普通の人間が成りあがって幸せになっても素直に応援出来ないし、物語的な因果律を帯びないので注意しましょう。
これまでの全三回のことをまとめると、このようになります。
①間接的に目的を解決する。
(欲しいものがあっても直接手に入れようとはしない。何か別のことをすることで間接的に手に入る)
②直接的に解決する場合は大義が立つようにする。
(ただ力を振るって相手を倒すのでなく、邪悪な悪役を倒したり、困窮した弱者を救うために力を振るう)
③努力をするのは弱者にする
(強者や普通の人が努力して幸せになろうとしても応援されない。弱者が幸せになろうとするとき応援される)
これらは組み合わせるとより強力な効果を発揮します。
例文
魔王が自らの愉悦のために民から略奪を行っている。
(②の要素)
勇者の血筋だが力の弱い主人公は仲間を集めて魔王を倒そうとする
(③の要素)
魔王を倒した主人公はその過程でかけがいのない仲間を手に入れる
(①の要素)
ありがちな話ではありますが、この三点を組み込むことによって物語性が強い話を作ることが可能となります。
ハッピーエンドの物語を作る場合には、このように主人公の勝利や幸せを読者が祝福出来るようなドラマが必要です。そのために、この三要素のいずれかを話に仕込み、物語的にしてみてください。
以上、これらが物語を作る場合のカレールーになる要素です。これらを取り込めば面白いかどうかを別にして因果律の流れのある物語的な話を作ることが出来ます。ぜひ参考にしてみてください。