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クリエイターの幸せとは?~真っ白に燃え尽きたい~

◆はじめに

 プロゲーマーのテキストを読んでいるのですが、創作に応用出来そうな点もある一方で、創作とは相反する要素も散見されます。一番それを感じるのは、その世界のトップランナーの人のコラムを読んだときに、『無理をしないで継続するほうがよい』という意見をよく見かけます。僕もこの意見には同意なのですが心情的には複雑です。一時的に頑張ってうまくいっても、人間には許容量というものがあるので、それを超えた努力はやがて苦痛となってしまい、じきに疲れてリタイアすることになってしまいます。長期的に何かを成すのではれば、無理をせず苦痛にならない範囲で継続することは必須ともいえます。しかし、世のクリエイターの望みは、僕の感じる限りでは『ガムシャラに頑張って無理を通し真っ白に燃え尽きたい』『後先考えずに本能のまま突っ走りたい』といったような『刹那を生きたい』という願望を強く感じます。(もちろん生活を第一に考えてどうやってマネタイズをするか悩んでいる人も多いですが、それに対する反動としてもこれを感じます)この点については『好きなことで生きていくという考え方は現実でも仮想でもよく言われるがそれを両立しようとすると刹那的に生きれない』のも問題と思います。今回はこの点を踏まえてクリエイターの幸せについて論じたいと思います。

◆トップランナーほど、無理をしないことを重視する。

 プロゲーマーの『ウメハラ』『絶対に諦めない』ことの重要性を説いており無理をしないという趣旨とは若干外れるところもあるのですが、それと同時に『自分を痛めつける努力はよくない』という趣旨の発言もしています。ウメハラの基本的な主張は『成長し続けることを目的にする』ということで、結果を出し続けるにはそれを生むための能力の向上を継続して行う必要があり、才能や一時的な努力のブーストは、その瞬間は勝てても、その後を勝ち続けることは出来ないということを言っています。

 プロゲーマーの『ときど』はもっと直接的なことを言っています。自分の方法論を『努力2.0』を名づけ、その中のメソッドに、『心に負荷をかけない』『頑張りはいらない』と、そのものずばりのことを言っています。30半ばから40前後になった彼らが、それでもトップを走り続けられるのは、情熱だけでなく、徹底した目的意識とモチベーション管理を行っているからだと思います。

 このようにプロゲーマーで成功している人間は、継続することを何より大切にしており、長期的に勝ち続けることを重視しています。彼らはプロであり、生活が懸かっているという面を大きいでしょうが、『自分の人生が一度の勝利で終わりでない』ということを意識しているのだと思います。そういう面からみると、『刹那を生きたい』クリエイターは『たった一度の勝利』、それも、それまでの人生をひっくり返す、『たった一度の大勝利』を目指しているようにも見えます。

◆クリエイターは『刹那を生きたい』

 僕は90年代から00年代に青春を生きましたが、そのころは学歴社会であり、『まじめに勉強していいところに就職するのが正しい』という価値観が当たり前で、それに反発するように創作の中では『自分の生きたいように生きる』というのが高らかに宣言されていました。
 10年代になるとそれは浸透して、20年代になると『好きなことをして生きる』が普遍的な価値観になります。しかし、僕からするとこれは欺瞞に聞こえます。『好きなことをして生きるといいながら、本当に自由なことをするのでなく、他人の目を気にして失敗しないように効率的な努力が求められており、結局、学歴社会のような、ある価値観に認められないと生きてけない社会になっている』のです。表面上は好きなことをしていても、『生活のために努力して権威に認められなければいけない』という息苦しさは90年代と変わりません。『権威が学歴から創作に入れ替わっただけ』です。

 僕は、この『自由に生きるといいながら束縛を受けることへの反発』を鬼滅の刃のヒットに感じます。登場人物は自由に生きるのでなく、目的のためには死を厭いません。自分の生命より尊い目的のために殉じる姿が子供たちに感動を生んでいるのです。

 ここまでで前置きが終わりますが、『結局90年代も20年代も生活や未来のために自分を殺すのが嫌で刹那を本能的生きたいと思ってる』というのが、若者やクリエイターの悩みだと思います。ノートを読む理知的なクリエイターは、生活を第一に考えるかもしれないし、年をとって思慮深くなった僕も生活を第一に考えます、マスコミのいうZ世代からは効率的に生きようとする姿勢を感じます。流れとしては僕の言いたいことと、真逆であり、刹那的に生きたいというのは検討外れのことを言っているので、もしかしたら、これらは単なる妄想で、僕自身の願望を投影してるに過ぎないかもしれませんが、僕からするとクリエイトというのは狂気であり『明日より今日のこの一瞬を燃え尽きたい』という破滅願望が陰で渦巻いているのを肌で感じます。

 冷静に考えれば、一度の勝利で一生分稼げる人はほとんどいないし、その一勝すら出来ずリタイアする人が大勢です。それでも、クリエイターは、いえ、おそらく僕自身は、くすぶった自分の人生を燃やしつくて真っ白な灰にしたいと思ってるのだと思います。

◆クリエイターの真の幸福とは?

 長くなりましたが、要約すると、『現代人は好きなことをやっても生活や未来のために結局自分を殺すという呪縛から逃れられない』という運命なのです。『ウメハラ』『ときど』など、トップランナーはそのなかでバランスをとっているのだと思いますが、我々ではにそういう両立はできません。そういった意味ではクリエイターの真の幸福とは、成功してお金を稼ぐことではなくて、『自分の一番濃い瞬間を愛することに捧げること』だと思います。そのクリエイターの最も脂ののっている才能のピークや、とっておきのアイディア、ため込んだお金や情熱、それを自分の一番好きなことにつぎ込んでいる瞬間がもっとも幸福なのだと思います。もちろん、人生はそこで終わりではありません。一度の成功をいつまでも懐かしむのか、それとも、その一度すら成功しないで死ぬまで後悔し続けるかはその人次第です。『長い目で見れば、自分をセーブして勝ち続けるのがもっとも正しいです。ですが、そうだからこそ、刹那を生きたいと思うのではないか?』と僕は思います。

 もちろんこれは、『その人の幸福とはなにか』という一例であります。これを読んで『自分の幸福とは何かと見つめなおす機会が出来たのなら幸い』です。

◆追記

テキストを色々と修正。


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