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第二回:初心者から始める物語の作り方 ~ヒーローのロジック~

 前回説明したケースに当てはまらない場合を今回は説明します。

 たとえば、バトル物やスポーツ物などのいくつかは、善行が報われるというよりは、強いほうや練習したほうがそのまま勝利する流れです。

 実は、少年向けの物語などでは善行が報われるとは少し違うロジックが働いているのです。今回は強いほうが勝つ、ヒーロー物をどうやって成立させるかがテーマです。

 さて、次の例文でどっちが物語的でしょう?

A『猟銃を買ったので野生のバッファローを撃って仕留めた』

B『人間の味を覚えた殺人熊を猟銃で撃って仕留めた』

 これも分かりやすいと思います。さてどちらが物語的でしょうか? 判断してください。

 答えは『B』です。Aは物語として何かしっくりこないでしょう。


 Bが物語的だと直感でわかると思いますがロジックとしては深い意味があるのです。ヒーロー物には単純に相手を倒せば成立するのではなく精妙な理由付けが必要です。後半部分にて詳しいロジックを説明しましょう。



 まず、これは第一回目の結論に反してます。Bは熊を殺すことが目的で、熊を殺してます。目的を直接達成してしまっています。間接的に目的を達成するという理論ならば、何か善行をした結果、勝手に熊が死んでくれなければなりません。もちろん少女漫画などにはいじめっ子が勝手に自滅する話も結構ありますが、今回の場合はあきらかに直接手を下しています。

 これには大きな理由があります。皆さんお気づきのように、この熊は殺人熊であり人間からみると明らかな『悪』です。ヒーロー物を成立させる理論として、悪を倒すような『大義があるなら直接手を下していい』のです。

 バトル物の話を作ろうとして失敗するケースとして『強い主人公は出来たけど活躍させられない』というものがあります。第一回目で説明したとおり、戦うことが目的で戦うのは物語ではありません。最低でも真の目的を用意して、戦うことで間接的に真の目的を達成する形が必要です。

 ですが、『滅ぼすに値する邪悪』や『救うべき弱者』が存在する場合には、直接手を下すことが可能になります。善行が因果によってに報われるように、悪が滅んだり、弱者が救われたり、大義がなされることを物語は肯定するのです。
 大いなる存在が、主人公の善行を報うように、今度は主人公が大いなる存在として悪を破滅させたり弱者を救うのです。

 なので『強い主人公が出来たけど活躍させられない』という場合は、その主人公の全力を込めた天罰を下さないといけないくらい邪悪な悪役や、見捨てることの出来ないくらい困窮した弱者が必要なのです。
 そういた面を鑑みると、ヒーロー物で真に重要なのはヒーローではなく倒される理由を持った悪役の方や救うべき理由を持った弱者の方が重要となります。

 次回、最後のコラムでは、もう一つ、練習して勝ってる場合を説明します。


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