
ずっと漂って3
150年生き続けている少女の話
前回の話
ずっと漂って1
https://note.com/cute_lilac426/n/n09a6e14f0c33
ずっと漂って2
https://note.com/cute_lilac426/n/n09a6e14f0c33
今使ってる言葉も割と古風なところもあるはずだ。
だから仕事仲間といるときは、もっと頑張って寄せてる…と思う。多分。今んとこバレてないっぽい。
昔どんな言葉使ってたのか忘れてきた。
ちょっと寂しい。
まあだけど美術館の常設展に行くと、私がもっとまだまだ普通の人間だった頃の手紙とか残ってて、その時は少しだけ思い出す。
それで、美術館の解説読んで、いや解説間違えてるなとか思う。まあけど大体は、自分でも知らなかったこと知って、へー…とか思う。
勤め先には今の時代に生きてる若者の設定で、全部嘘の生年月日の身分証明書を作ってる。
顔がそれくらいの年頃だからだ。
これがまあ、ここでは言わないが、とてもめんどさい。
何年か一回勤め先を変える際私はまた生年月日と名前を全く新しく作り替える。
顔が変わらないから生年月日を変えないと怪しまれるのだ。
とても面倒だ。
たまーに、何か齢の割に落ち着いてるねとか冷めてるねとか言われる時焦る。
普段いくらごまかしても、ふとしたとき人間の本性は出るのだ。
本当の名前は辛うじて覚えているが本当の誕生日も細かい齢も忘れてしまった。
ていうか誕生日あったのかな…?そんな状態だ。
まあだけど最近別に言わなくても良かったんだなって場面では齢聞かれたら、何か適当に笑ってごまかしてる。
だって150年生きても書類の手続きとかとても面倒なのだ。
1Kのアパートで、インスタントの豆腐の味噌汁あっちって食べてるとき、なんかもやーっと思い出すことがある。
何か藁みたいな家でガヤガヤしながら、豆腐を食べてて本当に美味しいねって日焼けした中年の女性が皆んなに向かって話してるのだ、私にも。
他の皆んなもうめえなぁ、こんなの滅多に食べれねぇよとか、俺達は幸運だなとか、まあ今私が話してる言葉よりだいぶ古い言葉で、わいわい叫んでるのだ。
皆んな私よりも大体は、ずっとずっと大きい。
あと他の人より小さい人で、私よりふた周りくらい大きい人が、隣で、うおおおおうめえよぉ〜!!って絶叫してて、こら口閉めなさい!行儀悪いって軽くペンって女性に膝を軽く叩かれてた。
女性は、その後私の口元を指で拭いながら、美味しいねアンタも嬉しいんだねって言った。
豆腐は冷たくて滑らかで上手いこと言えないけどキラキラした感触だった。
私は手をバタバタしてはしゃいでた気がする。
皆んな私を見て笑顔になっていった。
多分あの時が豆腐食べてて一番美味しかったんだと思う。
あれいつだったのかな。
今はインスタントだとはいえなんで同じ物食べてるのに、こんなモソモソしてんだろう。
外のバイクのつんざく音聞きながら、あの人達誰だったんだろうな、そう思いながらご飯を流し込んでいった。
つづく