静かな花は風に乗り(1:1:0)2人用台本・ラブストーリー
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タイトル透明な瞬間
クリエイター花うさぎ様
よりお借りしています(•ᵕᴗᵕ•)⁾⁾
役名の色分け機能等がある声劇投稿用ページ
↓声劇台本置き場 さんにも記載しています↓
〜〜キャラ紹介〜〜
カイル♂……友人の為に冬の森へ薬草採集に来た、30代位の男性です。
レーシィ♀……とこしえを生きる異形の魔女。深い森の薬草と人を見守る。彼女を人は森の導き手、森の精霊、森の賢者などと呼ぶ。姿を変えられる(フクロウなどになれます)
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作品名:静かな花は風に乗り(2人用台本)
作・こねこねこ
配役
レーシィ……
カイル…………
作品掲載アドレスhttps://editor.note.com/notes/n927cd1778c20/edit/
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以下本文です。
レーシィ:『今、そっと地上を離れて自由になった』
レーシィ:(M)人が冬に、この深い森を訪れるのは数年に一度だった。この森の深部にある冬にしか生えない薬草を目当てに人は来る。家族の為、子の為、知り合いの為。私はそんな優しい人が無事に採集して帰れるよう、木陰から見守り、森の外の人里まで風を使って雪を除け、道を作って導く。それが森の守り人として生まれた魔女の役目の1つ。私がずっと続けてきた事。
レーシィ:(M)けれど、あの年の冬は酷い吹雪で、薬草を握りしめた1人の男性は、私が駆け付けた時にはもう、歩くどころか指の一本すら動かせない様子だった。私は名も知らぬ彼を風の魔法で狩人の建てた小屋にそっと運び込んだ。
カイル:(M)朦朧とした意識と動かない身体。誰かに手当てされたり、差し出された木のスプーンで花の蜜の様な物を口にした気がする。数瞬起きては、また眠りに落ちていく感覚が幾度も幾度も繰り返された。視界がボヤけあまり見えない。寒さでやられたのか?
カイル:(M)森で迷い、手足の感覚すら麻痺して吹雪の中倒れたまでは覚えている。そのままだったら凍死していたに違いない。狩人の誰かが見つけてくれたのだろうか?いや、今は休猟期だ。獲物もない真冬の森に狩人はいない。では助けてくれた人は何者だ・・・?いつまでお世話になるかも分からないからお礼を伝えたい。それで花の蜜の乗ったスプーンが十数回往復した時、話しかけてみたんだ。
カイル:あの、助けてくれて、ありがとう・・・
レーシィ:っ・・・!?
カイル:ごめん。驚いたよな、急に話しかけて・・・でも、ずっとお礼が伝えたくて。オレはカイルという。あなたは?名前だけでも、教えてくれないだろうか・・・?無理にとは言わない。
レーシィ:(M)カイル・・・いつかはこうなると思っていた。私は人に見られてはいけない存在。人の口に乗ると噂は広まるのが早い。彼の目を曇らせる魔法を使っている後ろめたさもあり私は言葉を詰まらせた。
カイル:無理、なんだな。分かった。あなたは命の恩人だ。困らせたくもない。吹雪が収まって身体が回復したら、すぐに出ていくから、心配しないでくれ。
レーシィ:(極小さな声で)ごめんなさい。
カイル:っ・・・!
カイル:(M)女性だった。彼女はそれだけ言い、音もなくスッと去っていった様だ。
カイル:(Ⅿ)どんな女性なのだろう。この近くに住んでいるのだろうか?この吹雪の中を私の為に、この小屋まで通ってくれているなんて、想像も出来ない位か細い声だった。
間
レーシィ:(M)カイルの声は、弦楽器の様な低く力強い声だった。一時は風前の灯火の様な命だったけど、良かった。もう少しで動ける様になるでしょう。吹雪も収まってきている。声を聞かせる位なら大丈夫かも知れない。回復したら町に導いて、そうすれば私の役目は、終わる。
レーシィ:(M)終わり、なのよね。肩の荷が降りるのに、何?この気持ちは。レーシィ、レーシィ!私は魔女。人ならざる翼を隠した異形の存在。カイルとは違うイキモノ。その暮らしは、交わることがあってはいけない、魔女の掟とともに生きる存在なのに。
――少しの間――
レーシィ:(Ⅿ)小屋からの帰り、森を見回る。人がいないことには安堵したが、ふと小さな命のかすかな声を感じた。集中すると雪に埋もれるようにして白い仔ウサギが倒れていた。顔を近づけると幸いまだ息がある。薄く積もった雪を払い、そっと掬い上げて棲家に連れ帰った。
カイル:(Ⅿ)その日起きた時、彼女は既に側にいて、その膝らしき場所に白い仔ウサギが横たわり、時折鳴きながら花の蜜を舐めていた。レーシィに聞くと昨夜倒れていたのを見つけ、周囲には親もなく連れ帰る他なかったそうだ。
カイル:「野生の生き物も助けるなんて、大変だろう?」
レーシィ:「あまりにも幼くて、放っておいたら命が散ってしまうから」
カイル:「雪の中で倒れて、蜜をもらって・・・私と同じだな、ハハハ!早く元気になろうな」
レーシィ:「ふふふっ・・・さぁ、もう一匙よ」
カイル:(Ⅿ)膝の上で蜜を与えられている仔ウサギに軽く嫉妬したが、すぐに頭を振って子供じみた感情を消した。優しさが溢れているその声音。慈愛に満ちているだろうその瞳を、顔を今見られないのがとても残念に思った。
レーシィ:(Ⅿ)目を凝らして仔ウサギを見ようとする彼がとても愛らしくて思わず笑ってしまった。こんな風に心暖かくなって声を上げて笑ったのはいつぶりだろうか?その夜寝床に入るとカイルの顔が心に浮かんで、何故か胸が痛苦しかった。
カイル:(Ⅿ)次の日、また仔ウサギを連れてきた彼女と挨拶を交わしていると、元気になった仔ウサギは部屋中を跳ね回り、それを見た彼女は少女の様に笑っては抱きしめていた。
カイル:(M)その次の朝起きた時、外が静かな事に気付いた。視界が少し明るい様で室内も暖かい!晴れたのか・・・?まだ足が上手く動かせず、重心も取れない。体重を乗せる事は出来そうにないが、座る事はできた。リハビリを兼ねて数度起き上がり座る動作をしていたら、彼女が来たようだ。
レーシィ:お、おはようございます。
カイル:おはよう。吹雪が収まったのかな?私はお陰様で座れるまでになったよ!本当にありがとう!ただ・・・ずっと目が見えない事が気になってるんだ。一時的なものなら良いんだが・・・。
レーシィ:それは・・・大丈夫です。この森は今・・・目眩ましの魔法がきいています。森の外縁部に近づけば見えるようになるはずですから。
カイル:森の外へ歩いて行けばいずれ見えてくるって事か。ありがとう。
レーシィ:いぇ・・・。
カイル:(M)魔法か・・・森に入る前の村で、かつて森の導き手の不思議な力に助けられた、という宿の主から聞いた言葉を思い出した。彼は酒の席で「泥酔して森に入り何者かの声で帰路を示され、迷いの森から生還したんだ。あの声は美しい女性に違いない!」と言い、本当に居るのか、性別も、生き物なのかすらも、定かでない精霊にオネツな奴と冷やかされていた。
カイル:「仔ウサギは無事に?」
レーシィ:「えぇ、巣穴がわかったので連れていきましたら親がとても喜んでいましたよ」
カイル:「それは、良かった」
レーシィ:「貴方の足も、少しづつ動かし続ければ、数日で治ると思います」
カイル:「ふむ・・・なぁ、言いたくなければ構わないが、貴方の名前を聞いても・・・いいだろうか」
レーシィ:「・・・Ле́ши(レーシィ)です」
レーシィ:(M)一瞬、偽名を返答するか迷った。でも、素直に答えてしまった。なぜ?彼のこれまでの態度から、悪人では無いと思っていたから?大切な真名は、また別だけれど、彼には呼んで欲しいと思ってしまった
カイル:「レーシィ?」
レーシィ:「はい」
カイル:(M)レーシィ・・・か。彼女が本当に精霊なのだとしたら、心根は清らかそうだし、それはそれは美しい顔 なのだろうとも思う。一体もう何年、この森にいるのだろうか?
レーシィ:「あ、あの・・・他に何か気になる事が?」
カイル:「・・・っ。すまない。まだ歩けそうにないと考えていた」
カイル:(M)興味本位で彼女に聞いて、困らせたくない。ここまで良くしてくれた恩を仇で返す事になってしまうかも知れない。
レーシィ:「そうですか」
レーシィ:(M)歩く事を考える程度には、治ってきている事に安心した。寂しさを感じる様な気もする。胸が痛い。この痛みは、何なのだろう?
カイル:(M)もうすぐ歩けるかと思われたある日の朝、レーシィらしき足音が聞こえたが小屋に入ってこない。不思議に思っていると、大きな鳥の羽音がして、しばらくすると唐突に小屋の扉が開かれた。
カイル:(M)「おぉ!良かった!あんた、ココにいたのか!」と声を上げ、俺が最後に立ち寄った村の男性が2人、歩み寄る気配がした。聞くと彼らは普段は猟師で、自警団に所属しており、俺を探す為に雪の止む日を待っていたと言う。若い人は老齢のもう1人を師と仰ぐ見習いだそうだ。
カイル:女性が扉近くに居なかったか聞くと、黒い大きな梟が飛び去った以外に人影等はない、と言う。フクロウ・・・か。肩を貸されて小屋の外に出ると、眼が見える様になっていることに気づいた。森を出てもいないのに。彼女の話との齟齬を気にする暇は無かった。
レーシィ:「はぁ・・・はぁ・・・危なかったわ」
レーシィ:(M)ほんの一瞬、気づくのが遅かったら人の姿を見られていた。少し離れた大木の影から、彼が連れ出される様子を見守った。間近で看護する為に掛けていた目眩ましの魔法も切った。あの様子なら、村まで帰れるはず。一定の距離を置いてついて行き、村まであと半ばまで来た時、緊張が解けたのか、若い方の猟師がペラペラと話し始めた。
カイル:(M)とにかく饒舌な彼は、俺が薬草を2束持っていないのが残念だとか、もう1束あればお偉いさんに欲しがっている人がいたのに等と話しては、師匠に窘められていたが、懲りる様子もなく、呆れるばかりだった。
レーシィ:(M)その時だった。大きな熊が、3人に襲いかかって来たのは。私は猟師が二人もいるのだからと高を括っていた。然し若い方の猟師は碌な経験もしていない素人同然の様で、猟銃を構えるどころか、怯えてカイルの後ろに回っている。老齢の猟師はと言うと、自分の方へ引き付けるように熊を挑発しながら若い2人から遠ざけ、熊を撃つ考えの様だった。
レーシィ:(M)「このままでは危ない」そう予感した。あの老いた猟師が始めの一発を、もし外したら、3人共にやられてしまう!私は考えるより先に、熊の顔めがけて梟の鋭い爪を振るっていた。
カイル:(M)アッという間の出来事だった。サッと人の子程もある大きな梟が熊に襲い掛かり、片目を効かなくしたその時、後ろにいた若い猟師が俺を突き飛ばして猟銃を撃った。その弾は熊を大きく外れて梟の片翼に当たり、その敵意に激昂した熊に若い方の猟師が倒された。満足に歩けず、銃も何も持たない俺は、突き飛ばされたまま死んだふりをしているしかなかった。
レーシィ:(M)老猟師は若い猟師に向かう熊の足を狙い、1発目で何とか撃ち抜いていたが、若い方の猟師が熊の激昂で怪我を負う事までは防げず、私の時間稼ぎで装填できた2発目は、熊の逆鱗に触れ、老猟師は倒れ伏した。私は片翼の負傷をおして熊の顔を再び襲い、たまらず熊は逃げ出した。
カイル:(M)辺りに静寂が訪れてから、俺は身を起こし猟師2人がそれ程の深手ではなく気絶していることを確認し、バタバタと飛ぼうとする梟に近寄った。
レーシィ:(M)死ぬ恐れはない、と思ったが思いの外、翼の傷は深く、もう少しで生き物としての姿は取れなくなる。あの熊はこの森の者ではない。きっと空腹で冬眠から目覚め、深すぎる雪のせいで、戻る巣穴を見失い、この森に紛れ込んたのだろう。若い猟師も技量と度量がない内に、あんな大物に出遭ったのだから責められまい。
カイル:「大丈夫か?ずっと見守ってくれていただろう?・・・レーシィ、逆の立場になってしまったね。」
レーシィ:(M)あぁ、やはり知られていた!歩きながら数度、チラとこちらを見ていたカイルは、きっと梟に姿を変えた私が、レーシィだと、理解してしまったんだ。私は掟を破ってしまった。
カイル:すまない!俺に関わったせいで君を、こんな、酷い目に合わせてしまった。なんとお詫びして良いのか・・・!
レーシィ:・・・仕方なかった。私は人ならざるもの。この程度の怪我で死ぬ事はありません。それよりも、人に知られてはいけない掟に縛られているのに、あなたを愛し、身を挺して助けてしまった。こうなってはもう、この森にはいられません。さようならカイル。愛しい人。
カイル:「あぁ!レーシィ!ともに生きよう!全てから離れてもいい!人としての生を捨てても構わない!俺もキミを、愛してしまったんだ!」
レーシィ:「・・・私は永久を生きる魔女。あなたには、理を同じくする人間と添い遂げて欲しい。貴方を先に喪い、生き永らえる事は、私には耐えられません。幸せを願っています、カイル・・・」
カイル:「待ってくれ!レーシィ!レーシィ!!」
カイルM:梟は涙を一雫流し、その姿を崩れさせ薄紅色の花びらとなっていく。呼びかける俺の声に構わず、見る間に風に乗り高い空に舞い上がって消えた。
間
レーシィ:(M)「これで良い。これで、良いの・・・私を許してくれなくていい。憎んでくれても構わない。私は貴方を愛したまま、永久を生きていくわ・・・」
カイル:(M)レーシィ、そう何度呼びかけても、もう二度と会う事は叶わない。思いが通じた矢先に訪れた別れは、冬がくる度に、あの山小屋での日々を俺に思い出させるのだろう。
共に生きたい、その言葉の代わり、私を許さないでと願う魔女の愛は、いつまでも続くのだった
(終)