【30秒小説】膨らんで回る

 俺が公園のベンチでため息をついていると。目の前にピエロの衣装を着た女性が現れた。
 
「そこのお兄さんちょっと私と楽しいことをしよう」

「楽しいこと……どんなことですか?」

「それは膨らんで回らないものですよ」

「……膨らんで回らないもの?風船のことか?」

「半分正解です」
 
 ピエロの女性は持っていた風船を取り出した。

「それでは膨らみますよ。見ててください」

 風船の先を口に入れ大きく吐く。

 ところが全然膨らまない。

 男は不思議そうに思う。

「なんでその風船は膨らまないんだ?穴が空いているんじゃ?」

「そんなことないですよ、着々と膨らんでます」

 男は残念そうな表情で見る。

(せっかく博打物をやめようとしたのに、この有様だよ)

「それで何が膨らんですか?」

 ピエロの女性は微笑みながらいう。

「はい! あなたの借金が膨らみましたよ」

「回らないって首のことか……」

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