メンコンに行ってみたよ、のレポ

突然だが、「メンズコンカフェ」というものを聞いたことはあるだろうか。(よくある書き出し)

そもそもコンカフェとはコンセプトカフェの略で、女の子たちが様々なコンセプトの衣装に身を包み接客をしてくれるお店のこと。
「お帰りなさいませご主人様」のワードで一時期有名になったメイドカフェなんかもその一種だ。
で、メンズコンカフェはそれの男性版。男の子たちが様々な衣装で接客をしてくれるお店のこと。以下メンコンと略す。

よく聞かれるのは、「それホストクラブと何が違うの?」ということ。
風営法とか色々細かい違いもあるんだろうけどその辺はまぁ各自調べてもらうとして、体感的に違いが分かりやすいのはまず値段だろうか。お酒の値段はホストクラブよりメンコンの方が格段に安い。
あとは、メンコンの方が若い子が多かったりするし、ホストクラブよりも色恋的な営業が少なかったりする気もするけどそれは店によるかもしれない。

前回のnoteで書いた通りわたしはうつ病にかかり引きこもり生活を送っているわけなのだが、ある日都内に用があって出かけた先で数時間空いてしまった。
で、もともとXなんかでメンコンというワードはよく目にしていたので、ちょっとどんなもんか試しに行ってみようか…と思ったわけなのである。

近くにありそうなお店をX(旧Twitter)で調べていると、ものすごく見目麗しい男性の写真が目に飛び込んできた。
こんな美しい男性がこの世にいるのか…ぐらいの衝撃で、びびりつつもその子のいるお店にお邪魔してみることにしたのであった。

そこは繁華街のど真ん中にある寂れた雑居ビルであった。
住所には3Fとあり、なんとなく階段をとんとん上がっていくと、重たそうな扉が私を出迎えた。
正直かなり緊張したが、さんざん逡巡したのち、覚悟を決めてドアを開けてみる。
すると中にいたキャストさんたちが一斉にこちらを振り向く。
テンパってフリーズするわたしに、声をかけてくれるキャストさんたち。
「初めてなんですけど…」
「どうぞどうぞー」
ひとりが席に案内してくれた。

それから、システムやコンセプトの説明を受ける。
1時間いくらで飲み放題、それとは別にキャストドリンクの値段、という感じのようだが、初めてのことであまりよく分からず、とりあえずソフトドリンクを注文する。
人あたりのよく綺麗な顔立ちをしたキャストさんが話しかけてくれた。
「こういうとこ良くこられます?」
「いえ、本当に初めてで…」
「どうして興味持ってくださったんですかー?」
「X見てたら、すごくかっこいい方が居て、」
「へぇ!ちなみに誰ですか?」
その時既に、Xで見た、見目麗しいあの子がカウンターで何か仕事しているのが目に入っていた。
「あのお兄さんです…」
「へぇ!だってー!良かったですね!」
話してくれていたキャストさんがカウンターの彼に声を掛けると、にこりと微笑んで手を振ってくれた。

まるで二次元から飛び出してきたみたいな圧倒的な美青年だった。
わたしは他のキャストさんと代わる代わるお話をしながら、ちらちらとカウンターのほうを見ていたのだが、しばらくしてそのお兄さんが私の席についてくれた。

近くで見るとさすがにめちゃくちゃかっこよく、ドキドキというよりも、凄まじい緊張、もはや迫力があり過ぎて怖いとさえ言ってもよく、全く直視出来ない。

お兄さんは「そんな緊張することないよー」とへらりと笑って、「じゃあさ、コレ、飲んだら一発で緊張とか吹き飛ぶよー」
そう言ってメニュー表を指さす。
思考する暇もなく、とにかく緊張から逃れたい一心で、言われるがままにソレを注文する。ややもしてショットグラスに入った琥珀色の液体が運ばれてくる。
それが人生で初めて飲むテキーラだった。

「一思いに飲んだほうがいいよ」
彼が呷るのを見よう見まねで飲み干す、喉の奥から火がついたように熱くなる。
そこからあまり覚えていない。テキーラは数杯飲んだように思う。
確かに魔法のように緊張はほぐれ、それから色々な話をしたように思う。彼だけではなく色々なキャストさんが話しをしてくれて、まるで夢のような時間だった。

それから数日後。わたしはまたその雑居ビルの前に立っていた。
あの日の楽しさが忘れられず、また来てしまった…。
何度来てもたまらなく緊張する。またも勇気を振り絞って重い扉を開けると、今度はあのお兄さんが微笑んでわたしを出迎えてくれた。
初回のようにテキーラを飲み、何でもない話に花を咲かせる。
友達も少ないわたしは、こんな風に大人数でお酒を飲んだことすらほとんど人生の中でなかった。
それは、引きこもりで孤独に苦しんでいた私にはあまりにも楽しく幸福な時間であった。

それから、わたしは少ないお金をやりくりしながら彼に会いたいという一心でお店に通い詰めたが、あっという間に貯金が尽きて途方に暮れた。
誤解のないように言うと、彼らがお店に来るように強要したり、高いお酒を飲ませようとあおったりすることは一切なかった。
むしろ無理はしないでね、とか大丈夫?と言った言葉をかけてくれていた。
ただわたしが孤独に負けただけであった。

まぁ、いまも正直たまに行ってはいるのだが、あの頃のように何も考えずにぶち込んだりはしていない…つもり…ではある。
メンコンは本当に楽しくていいところだし、上手に使えばいい息抜きの場所になれると思う。
なんでもご利用は計画的にね。というお話です。

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