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絵本のまち板橋 No.1 「ボローニャ国際絵本原画展~絵本という芸術~」

はじめに

こんにちは! 淑徳大学 人文学部 の柏です。
このnoteでは、淑徳大学 人文学部 表現学科 杉原ゼミの学生が
ゼミ内でのプロジェクトや活動内容についてご紹介していきます。

このゼミではマンガ、アニメ、ゲーム、小説、映画など……、学生が興味をもっている多種多様なコンテンツの表現方法などについて、それぞれが研究しているゼミです。
個性豊かな学生たちが、各々の好きなコンテンツについて分析し、自分たちの企画や作品、創作に活かすなどして、新たな表現方法を模索しています。
フィールドワークやディスカッションに力を入れており、実際に見て、聴いて、体験し、共有することで探究を深めています。

★杉原ゼミでは、毎年複数のプロジェクトを進めています★
今回は、その中で以前から行っている「絵本のまち板橋」プロジェクトの活動を紹介します。

2021年度 ゼミnote 絵本のまち板橋プロジェクト|note
2022年度 ゼミnote ”Project”note__淑徳univ.杉原ゼミ|note
2023年度 このページ!


板橋区のキャンパスにある杉原ゼミでは、かねてよりゼミ活動の一環として「絵本のまち板橋」を取材させて頂いておりました。
さらに今年は、30周年を迎える「いたばし国際絵本翻訳大賞」のPR動画の制作も担当させて頂くことになりました!
というわけで今回は、「板橋」と「絵本」、そして「イタリア・ボローニャ」についてお話したいと思います。


1.絵本のまち板橋

1.1「絵本のまち板橋」とは?

「絵本」と「板橋」
一体なんの繋がりが?
そう思った方が多いと思います。
「絵本のまち板橋」はその昔に、板橋区立美術館が絵本の原画を展示したことが始まりにあります。

美術館を起点に始まった「絵本のまち板橋」は、絵本をはじめとした文化芸術を世界に発信していこうという取り組みのもとで、様々な活動を行っています。友好都市であるイタリア・ボローニャ市とも連携しながら、クリエイターと出版・編集者などの関係者が集まる場として、絵本を通じた創造都市の実現を目指しています。
絵本のまち板橋 とは|板橋区公式ホームページ

1.2いたばしボローニャ絵本館

板橋区中央図書館には海外絵本を専門に所蔵する「いたばしボローニャ絵本館」が併設されています。イタリア・ボローニャ市にて毎年開催される「ボローニャ・ブックフェア」事務局より寄贈された海外絵本を取り扱っており、その数なんと約3万冊以上!
板橋区立図書館

板橋区立図書館ホームページより

隣りにカフェもあるよ!
カフェ・ド・クリエ プラス 板橋区立中央図書館店

2.イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

2.1ボローニャ展とは?

ぼろーにゃ? 何だか言いにくいですね
ボローニャとは、街の名前です。
イタリアの北部にある街で、中世時代の建物が多く残っており、歴史が感じられる街並みです。
そんなボローニャ市と板橋区が、なぜ友好都市なのでしょうか?

板橋区とボローニャ市の交流は、1981年に板橋区立美術館がボローニャ国際絵本原画展を開催したことをきっかけにはじまりました。

「ボローニャ国際絵本原画展」は、イタリア北部の古都ボローニャで毎年開催されている絵本原画コンクールの入選作品による展覧会です。このコンクールは、児童書専門のブックフェア(Bologna Children’s Book Fair)に伴うイベントの1つとして、1967年に始まりました。子どもの本のために制作された作品を5枚1組にすれば誰でも応募できることから、世界中の新人イラストレーターたちの登竜門としても知られています。

板橋区立美術館ホームページより一部引用
ボローニャ展|板橋区立美術館

このように世界中のイラストレーターから応募作品が集まるボローニャ展ですが、今年2023年は世界91ヵ国から過去最多の4345件もの作品が寄せられました!
テーマはもちろんのこと、版画やデジタルなど、多彩な描き方や技法がコンクールの魅力のひとつでもあります。
このコンクールでは、毎年入れ替わる国籍の異なった5名の審査員が作品を選考します。
その特色は何と言っても多様性です。
応募作品の表現も審査員の観点も、この多様性が根底に流れています。

2.2絵本という芸術

皆さんは「絵本」と聞くとどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?
子どもたちが読むもの?挿絵のある児童書などでしょうか?
絵本を芸術として認識していない方が多いかもしれません。
しかし今回、私がこの展覧会に赴き一番印象に残ったことは、多様性の中に確かに存在する普遍性です。そして、この特徴こそ私たちが普段口にする「芸術」というものの大切な要素だと思うのです。

ジャンヌ・マケーニュ「ちょっとおでかけ」(フランス)

この展覧会は5枚1組のイラストレーションを作品として展示しています。応募する時点でその作品が出版されているか否かを問いません。
5枚のイラストそれぞれに名前が付けられているものもあり、その様子はストーリー性を持たせた絵画という印象でした。そして展示の仕方も様々です。ストーリーが追えるように順番に展示されているものもあれば、絵の向きも大きさもバラバラで見る人の想像をよりかきたてるような作品もありました。
*これらの写真は特別な許可を得て撮影しています

2.3〈「視る」を超えて〉~触って「視る」触察パネル~

今回の展覧会の一画には特別展示のコーナーが設けられていました。
〈「視る」を超えて〉プロジェクトは、日本で開催した「2020ボローニャ国際絵本原画展」の特別展示として企画されました。今年はその第2弾になります。
イラストレーションを木製パネルで作って表現する触察パネル、絵本そのものに様々な視覚以外で楽しめる要素を取り入れた「さわる絵本」など、全ての人が隔てなく楽しみを共有できるように、表現の新たな可能性を探るプロジェクトです。
今回のボローニャ展は最終審査の結果、27ヵ国79組の作品が入選しました。そしてプロジェクトの一環として、その中から5枚のイラストレーションを木製のパネルにして表現する、というものが今回の特別展示のうちのひとつにありました。

寺澤智恵子さん作「まいちにの、すてきないろいろ」を元に作成したパネル

「イラスト」を「触察図」にする。「視る」から「触る」への変換は時に言語の翻訳よりも複雑で難しいものなのかもしれません。
色や遠近感など、視覚から得られる情報をどのように触覚で表現するのかがパネル製作の大きな課題だったそうです。
人が認識できるぎりぎりの厚みで木材の切り出しを調整し、ミリ単位でレイヤーを分けて削ってあります。
さらに質感にもこだわり、飲み物や海など液体の部分には塗料を塗って質感を表現し、木材を研磨する際は場所によってあえて木のザラザラ感を残している部分もありました。

ジェームズ・バーカーさん作「原始の世界」を元に作成したパネル

確かに多様な作品ですが、その表現方法には共通したものもありました。
「例えば、暗い場所と明るい場所、海と陸など。対立するふたつを表現する際に質感を利用しているように感じました」
実際に目の見えない方が作品に触れて、このようにおっしゃっていたそうです。
表現を理解するということは、作者が何を伝えたいのか理解する、ということだと思うのです。
多様さばかりに目が行きがちですが、その中にも共通した普遍性を見つけることで、また一歩、作品のより深いところまで踏み込んで行けるのではないかと感じました。

板橋区立美術館でのボローニャ展は既に終了してしまっていますが、今後も展覧会の予定がありますので興味がある方はぜひ足を運んでみてください!

西宮市大谷記念美術館(兵庫県)
*こちらの展覧会では「さわる絵本」の展示は行っていません。
 2023年8月19日(土)〜10月9日(月・祝)
2023イタリア・ボローニャ国際絵本原画展 特設サイト|西宮市大谷記念美術館

石川県七尾美術館(石川県)
 2023年11月10日(金)〜2023年12月17日(日)
2023展覧会スケジュール

3.板橋国際絵本翻訳大賞

板橋区では毎年、国内では珍しい絵本の翻訳大賞を行っています。

「絵本のまち板橋」では、外国の文化に触れ、国際理解を育むことを目的に、英語とイタリア語の絵本の翻訳コンテストを実施しています。また、国際理解を深め、表現力や英語力を高めることを目的に、中学生部門(英語の翻訳のみ)も設けています。

板橋区立図書館ホームページより
いたばし国際絵本翻訳大賞|板橋区立図書館

1994年から始まったこの翻訳大賞ですが、今年で記念すべき第30回を迎えます。そこで、以前から連携のあった板橋区立中央図書館の方々と共にPRコンテンツを作ることになりました!
具体的には、YouTubeでの動画投稿やその他SNSでのPRが主になる予定です。
詳しい活動内容などはまた次回のnoteでお伝えしたいと思います。
皆さんも、もし少しでも興味が湧いたらぜひボローニャ絵本館に足を運んでみてください。
併設されたカフェからは平和公園の風景が眺められます。たまには一息つきながら童心を思い返すのも良いのではないでしょうか。

おわりに

最後に、原画展にて展示されていた作品をひとつ紹介したいと思います。

ユリヤ・ツヴェリチナ「戦争日記」(ウクライナ)
左上から「車の墓場」「爆発」「マリウポリ」「地下のシェルター」

赤色が基調で描かれたこの作品からは、悲哀や、やるせなさが伝わってくるような気がします。おそらく、多くの人たちにとっては、海の向こうの知らない国の知らない人の作品のひとつに過ぎないのかもしれません。去年の原画展では、ロシアの方の作品を展示するか否かという議論が交わされました。しかし、すべての作品を同じように展示するように決めたそうです。きっと様々な事情があるのでしょう。しかし、その中でも、私やあなたと何ら変わらない普遍な部分がこの人の中にもある。この作品は、この展覧会は、そんなことを伝えたいのだと私は思うのです。

「駅」

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
以上、淑徳大学 人文学部 表現学科 杉原ゼミの柏でした。

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