墜落
こんにちは、三日坊主のややや?です。毎日同じ時間に短編を書くぞ!と意気込んだもののネタがなくて、寝落ちてました。
太宰治の人間失格を現代に置き換えるとどうなるのかなと思い、今日は選択の自由をテーマにぽちぽち。(ファンの方すみません。素人の独りよがりです。)
危機感を持たざるものは人にあらず!
あおるようなワードに興味が湧き、リールをタップすると節約術を熱弁する同年代のサラリーマンの動画だった。
いいなあ、やりたいことがあって。
、と危機感をまるっと包めて本能から遥か遠くへぽいっとしてた僕はつぶやいた。
欲しい内容じゃなかった。と思いつつ、しっかりと最後まで拝聴し、ついでにメモをとる。スクショをしないのがこだわりだったりする。鉛筆をメモ帳に挟み、続けて画面を上にスワイプ。初めて見る人たちにこんにちは!していたら日曜日の朝が潰れていた。
あーあーあー新人社会人はちゃんとしないとダメさ!ってあれだけ先輩に注意されたっていうのに僕はなんて「ダメな人間」なんだろう。
学生というものは素晴らしかった。
教育委員会監視の元、文部科学省による「真人間」たらしめる魔改造を一身に受け、大人に反発することに味を占めた。教育委員会万歳、よくわからんどっかの団体万歳!
本当に敷かれたレール通りの22年だった。
小学生のころ、早く大人になりたいだの、子供の個性を埋没させるなだの、大人に子供なんてわかるものか!とか矛盾する主張を上げては下げて、思い出した時にまた再利用して。それはそれはもう地球に優しい考え方を持っていた。
中学生のときには異世界移転ができるくらいのエネルギーをこの身に宿していた。
富士の(不死とかけて)漆黒の病症候群にすすんでかかり、中2には長い前髪で左目をしきりに隠して、毎日切りなさいと怒られていた。
そうだよね。成長過程の子供の視力は大事だよね。ありがとう、先生。
高校に入ってからは部活にのめり込んで、ほぼ陽キャへと変貌を遂げていた。さっさと童貞を捨てて充実した高校生時代を終え、大学に入った。
大学ではある程度の自由が謳歌できたので就活に強いサークルに入って筋肉を鍛えた。先輩たちには可愛がられ、大手の保険会社の内定が決まった。
「人生百年時代、医療従事者でなくても利用者の皆様に健康と希望を届けることができます。」当時なんの疑問もなく自信いっぱいに言い切っていた。
陳腐。なんて陳腐なんだ。筋肉がついていただけの無個性、笑顔の爽やかさだけが取り柄だった。
内定が決まってからは金がないながらも、めちゃくちゃ遊んで人生最後の自由だぁーーって叫んだ。
その時の自分に言いたい。お前の自由はこれからだ。これからは先は見えない。敷かれた道はない。いつ踏み外すかわからない道が続いている。ただそこには選択の自由がある。
会社の犬、リストラ、起業、海外エトセトラエトセトラ。トレンド入りワードたちの向こう側には真の自由による恐怖と不安が満ちている。こんなので残りの長い人生どう生きればいいんだ。
社会人一年目はルーキーとかもてはやされて気持ちが良かった。入社後の初給与は32万。いろいろ差し引いても十二分に足りた。
レコード、キャップ、バイク、競輪、競馬、興味のあることは片っ端からクレジットカードで体験した。よくいうだろ。経験は金に変えられないと。
カード明細は悲惨だったが、3ヶ月に1回、ボーナスがあるし問題ないと思った。
催促状が届くようになっても話のネタにして笑い飛ばしていた。誰もかも笑っていて眉を顰めることはなかった。それがおかしくなったのは取引先でのことだった。
ーーそれを面白いと思っているのか君は。そんなことを言われても優しい人たちはこの間まで学生だから仕方ないと思うだけかもしれないが、私は違う。取引を辞められるだけの権限を持っていたら君の会社とは今後関わりを持ちたくないね。
笑顔のまま凍りついて、ひとり会社を後にした。爺さんの僻みと強がることもできたが確かに響くものがあった。
コンプライアンスにくるめられた僕の会社は本当に優しかった。就活生を思いやり、新入社員を労ったりと、サービス外労働を毎日強いられている。毎日毎日、笑顔を張り付けてみんなが傷つかないようにバカに徹するかわりにご褒美の32万をもらう。ピエロだ。
安泰を捨てたくなかったので僕は今後もコンプライアンスに則ってイエスキリストの如く、隣人を真綿で幾重にも包み込んで優しさで窒息させる。
危機感はこの社会に必要はない。僕たちはただ選択を諦めて、社会に必要な人間になるんだ。
誰のための社会なんだと!かつての社会の主役だった僕が文句を言う。でも、今の僕には必要はない。しっかりと耳と目と口を塞いで心地よい世界でみんな一緒に墜落し続けよう。
書いていて思ったのですが、以前の「大阪をカテゴライズ」に登場するペラペラの東京出身はこの子じゃないのだろうか。
興味があったらそちらも見てみてください。