雲仙温泉ナイトツアー「湯にも地獄の物語」 ツアーシナリオができるまで
雲仙温泉ナイトツアー「湯にも地獄の物語」 ツアーシナリオができるまで
令和3年10月10日(土)からスタートしたナイトツアー雲仙温泉「湯にも地獄の物語」。白煙のぼる暗闇の長崎県雲仙市小浜町雲仙の雲仙地獄を、提灯を掲げて歩きながら、語り手による悲しく、怖くて、不思議で、クスッと笑える四つの物語を聴くオリジナルツアーです。おかげさまで今年3年目の開催になります。
JTB長崎さんとツアーディレクターの女性から令和2年の夏頃にお話をいただき、私がツアーシナリオを担当することになりました。まずは郷土資料を参考にして雲仙地獄にまつわる地元の昔話を調べることから始めました。いくつか候補になる物語を集め、ツアーコース設定を検討し、現地リハーサルを何度も繰り返しながら、四つの話に絞り込みました。
第一話、絵踏悲話「雲仙哀歌」。働き者で潜伏キリシタンの青年と村の庄屋の娘の悲恋物語です。『キリシタン伝説百話』(谷真介著)より。
第二話、決闘 雲仙湯煙地獄。雲仙山の修行僧と湯の里で悪さを働く河童の大将の息づまるような妖術と法力対決のお話しです。
第三話、島原お糸事件、事の顛末。全国をふれ歩く薬売りの行商人の妾となった島原のお糸が、地元の別の男と浮気の末に世帯をもち、激怒した行商人を殺害するという事件の顛末です。この事件は諸説ありましたので、島原市の市史から裁判記録を確認し、シナリオ化しました。
第四話、地獄からパライソ(天国)へ ―「清七地獄」の由来―。長崎から雲仙地獄へ連行された潜伏キリシタン清七の殉教のお話しです。
いずれの話も雲仙地獄にまつわる物語です。
リハーサルの間に、地元関係者からエンターテインメント性を出してほしいという強い要望があり、語りはプロの女性にお願いすることにして、雰囲気をかもし出すために三味線奏者の女性に加わってもらい、さらには小芝居の要素を含ませることにしました。これは市民ミュージカルの脚本を担当してきた私自身の経験を生かし可能になったものです。この演出により日本全国どこにもないオリジナリティあふれるナイトツアーが誕生したと思います。
ツアーのスタートまでに、地元関係者のみなさんの前で3回のトライアルリハーサルを行い、意見・感想・要望をお聞きして、内容の修正を重ね、ツアーシナリオは完成しました。とくに潜伏キリシタンが雲仙地獄の熱湯をかけられ殉教する残酷な拷問に関しては、信者にとっては信仰を貫いて希望のパライソ(天国)へ近づく正しい行いであり選択だったこと、雲仙地獄は神聖な場所であることを付け加えました。
本来なら令和3年4月からスタートの予定でしたが、ご存知の通りコロナ禍により半年延期となり、ようやく同年10月にツアーが始まったという次第です。
そこでツアー開始を記念して〈雲仙温泉「湯にも地獄の物語」瓦版〉を作りました。構成・文・イラストは私が担当。デザインをオブザーバーで応援してくだったミート・デザイン工房さんにお願いしました。まったくのボランティアなので印刷は限定50部だったのですが、ツアーの最後に参加者へお配りし、雲仙地獄や四つの物語をより楽しんでもらい、ご家族、知人、友人に広めてもらうためのツールとしました。現在は主催の雲仙観光局さんが印刷して参加者にお渡ししていると思います。
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