グローバルな「里宮」
前回投稿で「社会の精神の安定化に効果が高いものは古代・中世の建造物」と書きましたが、国民国家を自明の前提として議論している訳ではないので、社会ではなく「世界」ないし「人類」とする方が適切でした。
さて、人類の精神の安定化に効果が高いものは古代・中世の建造物だとして、別にそれが「本物」である必要はありません。
世界遺産として登録されているような古代・中世の建造物の場合、たとえ相当に経年劣化していても、その修繕には厳格な規制があります。
そうした厳格な姿勢は学問的には価値があるかもしれませんが、人類の精神の安定化には貢献しません。
むしろ、「本物」ではなく、かつて存在した「本物」をできるだけ再現したレプリカの方が、「本物」を舞台として息づいていた過去の歴史を想起させる力が強く、人類の精神の安定化に貢献するはずです。
また、「本物」の所在する場所にこだわる必要もありません。
世界遺産の場合、古代・中世に建造された宗教施設の多くは、現在ではかつて信仰を支えていた人々の文化とは切り離されて廃墟となり、あるいは、建造物としては残っていても、それが異教徒に囲繞されているような場合も多々あります。
そうした、かつての宗教施設しての機能・生命力を全く失った「本物」の建造物よりも、「本物」が所在する場所以外で、「本物」をできるだけ再現したレプリカの方が、人類の精神の安定化に資するはずです。
神道では「里宮」という概念があり、一般には、
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奥の院や本殿が山上にある神社で、山のふもとの里に置かれている宮。ふつう、参拝者の便宜をはかって設けられる。
https://kotobank.jp/word/里宮-69373
といった説明がなされています。
神道での用法とは若干異なりますが、世界各地の、古代・中世の宗教施設のレプリカを、いわば時空を超えたグローバルな「里宮」として日本に建造すれば、それが人類の精神の安定化に資するのではないかと私は考えます。
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