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アイドル ラウールは電気羊の夢を見るか?

TGC2022A/Wから1週間。今日はアクスタ戦争なのかな、なんて思う朝。

ラウールのランウェイの動きとともに、山本耀司さんの「ガラスの時代 ラウールバージョン」が心に響いています。
山本耀司さんのような素晴らしい経歴も成果も名誉もない、ごく普通の一般人の私ですが、30年働いた仕事を辞職して新たな職につき、家族の面倒をみながら、緩和ケア病棟に入院している父に毎日手紙をかき、それを支える母に毎日電話をする日常に、やはり、生まれたことと死ぬこと、そして、その間の時間や空間について考えます。
それは、とても立派な山本耀司さんでも同様なのではないか、より真摯に向き合われているのではないかと思料しています。

その山本耀司さんが、19歳のアイドル・ラウールに歌詞と歌を送ってくれました。そして、TGCの会場の大半が、10代、20代の、キラキラでキュートなファッションで身を包み、スター達に憧れや愛情を抱き、青春や若さを謳歌しているお客さんであることを前提に。

一番、ラウールのファンとしてうれしかったことは、あなたと私(あんたと俺、きみとボク等、、)という二人称の歌詞が得意な山本耀司さんが、今のラウールを一目で見抜き、令和の時代に生きる僕という一人称の歌詞にしてくださったことです。
SnowManの年齢が上の8人は、アイドルでありながら、いわゆる「リアコ」
現実の恋人のような、触感のある色気とやさしさをふりまく方たちですが、ラウールは、その中で、大切に純粋培養された表現体のような特殊な存在。たしかにまだガラスのケースの中に入っている感じもします。もちろん、現実や芸能界のなかで、ラウールも成長していますが、まだ、愛するたった一人の人との関係性で自分を見つめる状況ではなく(ドル誌の記事を信用するなら)、ファンやメディアを通して自分がどう見えているのか、自分の思いが伝わっているのか、自分は自分らしくいられているのか、自分は自分に固執しすぎていないのか等、自問自答を繰り返し、トライ&エラーを試み、たくさんの勉強に時間を割いている感じがします。

山本耀司さんは、まさに、その19歳、真っただ中のラウールの今に、歌を送り、表現する場を与えてくださいました。

「降りてこい、降りてこいよ」

「足で地面を歩く暮らしに、結構キツイけど、身体張って、命かけて暮らす人生は、それでもなかなか、それでもなかなか、色っぽいぜ」(山本耀司「ガラスの時代」より引用)

ラウールは、まさにこの歌詞に呼びかけられる主人公であり、ガラスを自ら破り、ランウェイから足で地面を歩く暮らしに降りていき、覚悟の一息をアルカイックな微笑みで漏らしながら、観客の中に消えていきました。

そして、ラウールが観客の中に消えると同時に、ラウールに投げかけられた言葉は、今度は驚きと戸惑いとともに観客の中に広がり、静かに観客の心の未来に浸透していくのでした。

ラウールのファンは、19歳のラウールの姿を、映像とメッセージにして残してほしいと心から願っています。ラウールには、私も含め、年齢が高いファンも多く、それはそれぞれの人生を通して、若さの美しさと儚さと尊さを自分ごととして実感しているからでもあります。

芸能界というメディアの難しさや複雑さを考えると、簡単には叶わない夢と半ば諦めかけていましたが、こうして、TGC2022A/Wとして、完全な形で残ることになりました。一人称の歌が、何ひとつ欠けてない完成された表現作品となるのは、まさに19歳というラウールの年齢だからだと思います。本当にありがとうございます。山本耀司さんが人生をかけて創ってきた洋服を着るという縁をラウールがもてたことに本当に感動しています。運命と人知への感謝しかありません。


最後に、TGC当日最初に流されたティーザーと、TGC本番のランウェイの映像をつなげたくて、リンクとなるような映像を探しました

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ライアン・ゴズリング主演、ベンジャミン・ウォルフィッシュ、ハンス・ジマー音楽の「ブレードランナー2049」(2017年公開)の公式予告です。そもそもは、最初にこのティーザーを見たときに、バックに流れる音楽に、ハンス・ジマーを感じたというのがきっかけにもなっています。

「ブレードランナー2049」は、人造人間レプリカントのK(ライアン・ゴズリング)が、メイドAIのジョイとともに、自分の人間的な出生と記憶を求め、すべてを「雪」の中で満足した心で喪失をしていく物語ですが、「自分は何者か、どこからきたのか」という問に目覚め、生きる目的を見出すまでのところが、まさに今回のラウールのランウェイに繋がります。

最初、ティーザーを見たときは、「犬王」みたいなステージだったらいいなと思いましたが、何倍もすばらしいものを本番で見ることができました。でも、犬王も諦めてないのは、ここだけのお話です。






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