【師弟読書会】心を巡る旅—『心はどこへ消えた 東畑開人』 -106
○導入
弟子:「師匠、『心はどこへ消えた』を読み終えました。心とは本当に色々な側面を持つものだなと感じました。心のことを考えると、どうしても自分の過去の体験や経験を振り返ることになりますよね。今振り返ると笑い話になるようなことでも、当時は真剣に悩んでいたなって思うんです。」
師匠:「うむ、悩みは時間の経過で形を変える。それも心の一つの働きだ。この本を読んで感じたことを聞かせてくれ。」
弟子:「はい。『心とは本質的には孤独なんだ』という表現が印象的でした。だから、夜一人で悩んだり、自分の中でいろいろと戦ったりすることもあるんだろうなと思います。その孤独さを通じて、自分自身と向き合うことができるとも感じました。」
心は本質的に孤独であるけれど、どこかにたどり着きたいと願って夢を作り出す。
師匠:「孤独は、心の内面を深く掘り下げるための場でもあるな。それは辛さでもあり、強さの源でもある。」
弟子:「そうですね。また、『脳とは他者』という話がありました。自分の脳が自分自身だと思っていましたが、必ずしもそうではないという気づき。これは自分の固定観念を揺さぶられる内容でした。」
師匠:「脳が他者、面白い視点だな。それは、自分を外側から見る方法でもある。そうした考え方が、自分や世界をより広く捉えるきっかけになるのかもしれない。」
弟子:「そうですね。自分の心を見つめ直す楽しい時間を過ごせました。では、師匠、読書会を始めましょう!」
○師弟読書会
師匠:「そうだな。まず、『緊急事態では、未来は手繰り寄せるよりも、待つ方がいい』という言葉について考えてみようか。」
緊急事態では、未来は手繰り寄せるよりも、待つ方がいい。形は少しずつはっきりしてくる。行動するのはそれからだ。いったん止まって、「様子を見る」。未来を再建するために必要なのはそういうことだ。
様子を見る。これがメンタルヘルスの最終奥義だ。
弟子:「僕もこの言葉に強く惹かれました。未来を焦って掴み取ろうとするのではなく、まず立ち止まって様子を見ることが大事だと。この『様子を見る』という行動自体が、心の余裕を作るのだと思います。まさに、最終奥義ですね。」
師匠:「その通り。焦って動けば、かえって状況を悪化させることもある。待つ勇気を持つことは、未来を受け入れる準備を整える行為だ。」
弟子:「私は、『生きるとは変身し続けることだ』という言葉。状況や相手、時間の経過によって私たちは変化する存在なんですよね。だから、『べき』や『正解』で物事を決めつけるのは違うと思いました。」
生きるとは変身し続けることだ。私たちには複数の自分があって、違った部屋で違った相手といるとき、違った自分に変身する。
師匠:「『べき』は自分を縛るものでもある。変身し続けることを受け入れることで、人は新しい可能性を見出せる。『正解』という枠に囚われない生き方が私は、好きだな。」
弟子:「日頃、正解をもとめて仕事をしてしまう光景をよく目にします。自分がしていることに対して、他人から『正解じゃない』と心のない言葉を投げかけられる。そういうのは嫌ですね。『心の定規は複数あった方がいい』という言葉もあり、まさにそうだなと感じています。」
私たちの生きている社会では、正しい生き方は一つではなく、心の定規は複数あった方がいいと思うからだ。
師匠:「そうだな。だからこそ、この言葉の、『変身し続ける』という思考は自分の根っこに持っておくのは大事ではないかな。過去、いいとされていたことでも今はダメとされているものもある。そういうときもあるから、私の語った『様子を見る』という行為も必要になってくる。時の流れに身をまかせ、なるようになるだな」
弟子:「優しい、というのは大事と私は思っていまして、その中で、『誰かの人格を変えたければ、優しくしてあげるほかない』という言葉。心に響きました。人を変えようとするとき、責めたり攻撃したりしても何も変わらない。優しさが必要なんだと。」
誰かの人格を変えたければ、優しくしてあげるほかない。「やなやつ」に優しくするのは、骨が折れる。だけど白い目を向けることは事態を難しくするだけで、温かい目でしか人は変わらない。危険にさらされて怯えているときではなく、安全だと感じられているときにしか、人は変われないのである。
師匠:「優しさは、相手を安心させるための道具だ。人は、危険を感じている間は心を閉ざす。しかし、安全だと感じられるとき、初めて変わる力が生まれる。お前も、誰かに優しくあることを心がけてみるといい。」
弟子:「優しくしたい気持ちは、いつも持っていると思っているハズなんですが、振返ってみると、そうでないこともあり、後で悔やんでいます。しかし、決して、意地悪しようとしたんではない、良かれと思ってやったという気持ちもあります。日頃生活していたら『やなやつ』は出てきますよね。しかしその人に対しても、『温かい目でしか人は変わらない』という心を持ちたいと思います。今日の話を胸に刻んで、自分自身と向き合い続けます。」
師匠:「そうだな。人は人が好きという本性があると思っている。『結局人を求めることをやめられない』という言葉にもあったが、言い得ている。そういう視座に立つのも、いいのではないかな。」
人は人を怖がったり、嫌いになることもあるけれど、結局人を求めることをやめられない。生身の人間がそこにいる。それだけでわけもなく嬉しくなってしまうのが私たちだと思うんだ。
弟子のひとり言:
心の孤独、未来への向き合い方、変化を受け入れる柔軟性、人に優しくあることの大切さ。この本を通じて、自分自身の心の旅を続ける気づきを得られたな。読書は、自分を見つめ直す時間を与えてくれる。さぁ、次は何を読もうかな。