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NHKBSを考える

12月1日からNHKのBSが再編された。魅力が凝縮と謳っているが事実上の縮小でこれまでBS1、プレミアム、4K、8KとあったものがBS、プレミアム4K、8Kと3波となった。これによりこれまでのBS1(2K)がプレミアムで放送されている番組の大半を流入させたため従来のBS1の番組が終了・縮小。スポーツ中継も大幅に減るとみられる。これでは誇大広告といわれても仕方ない。

BS1はかつて報道・スポーツを軸としたチャンネルという構想・理念があった。その一つであったBSニュースもかつては毎時1回、深夜帯と放送されていたのが2017年以降段階的に縮小され、12月より平日が5回、土曜が2回と見る影なしである。さらにBS報道の一つであったキャッチ世界のニュースがBS縮小の準備か総合テレビに移動、それにより国会中継や高校野球などで大幅に休止が増加した。報道軽視といってよい状態。更にスポーツ中継もNBA、NFL、テニスといった世界大会の中継は年々廃止となり、局の見解は未定だがその他の野球、Bリーグ、ジャンプに始まる冬季競技も土日のみの放送でプレミアムチャンネル化した平日は難しくなるだろう。

このようにチャンネル・内容面とも衰退といっていいほどだが肝心の残った番組の質も良いとは言えない。世界ふれあい街歩き・英雄たちの選択・ワイルドライフといったBS主力の番組も再放送や再編集も増加し1日のほとんどが再放送という日もある。

4Kや8Kを「超高精細カメラがとらえるきめ細かな美しい映像、驚異の臨場感」などと謳っているが盛り上がらない。ネットコンテンツの普及やテレビの衰退によるものが大きいがそれを抜きであえて考えてみる。

ここ数年でBSの番組が30分に編集などして総合や教育で放送されることが増えた。その逆にNHKスペシャル、ETV特集を完全版と称してBSスペシャルで放送するケースも多い。さらに~アーカイブス、~選、~セレクションといった題を付けた実質再放送も増加。無意識に視聴しても再放送の多さを実感する程であり想像以上に増えているはずだ。要因として制作費の減少があるようだ。

かつてBSハイビジョンの主力だった「ハイビジョン特集」は高画質高音質を生かし一つのテーマを掘り下げる番組だった。完成度は高く、現在も時折再放送されるが今見てもテーマや構成は好奇心をくすぐる。しかし終了後後継となる番組枠がない。それどころか最近はBSにも不必要なほどタレントを呼びスタジオパートで水増ししたひな壇番組が多くなった。これらは外注制作が影響しているらしい。

さらにNHKスペシャル、ETV特集はNHKの取材力を集めた番組に思われたが近年の内容低下が著しい。

Nスペ(NHKはこの略称をよく用いるがあまり好きではない)は単なるナレーションと映像でつなぐのではなくタレントを数人呼ぶスタジオパートの回が増えた。最近の「混迷の世紀」などは内容はともかく、久々に迷走するNスペを立て直したように思えるがかなり軟派な路線に傾いている。ETV特集は戦争など一般には受けにくいテーマも題材とする番組で、かつて週4日放送していたようだが現状土曜のみである。さらに再放送も増加。しかし教育テレビがEテレと悪ノリしてからもこの番組は一貫して硬派で、ジャーナリズム精神を問うものが多い。最近はニュースですら首を傾げる内容に時間を割いていることも多い。ある意味NHKの良心である。

これらの番組も今後NHKの路線変更や弱体化によっては危機とみる。肥大化という批判から受信料値下げに踏み切ったが、最近はNHK職員の退職が相次いでいるという。要因はモチベーションの低下。NHK NEWS WEBといったネット記事を充実させているが、それも民業圧迫との批判より廃止となるようだ。BSの縮小も民業圧迫批判からくるものという。

4Kテレビの普及状況はA-PABによると、2022年8月末時点で1383万5000にとどまり日本の世帯数の半数以下という。4Kテレビがある程度普及するまでもう数年程度停波を待ってもよかったが、NHKは「逆にBS4Kを視聴してもらう起爆剤にしたい」「BS4Kの魅力的なコンテンツを打ち出していくことに取り組める」という。しかし上記のような編成では魅力とはいいがたく逆にBS離れも進むのではないか。

また2Kと4Kはサイマル放送をしないと説明していたようだが実際はかなりの番組がサイマルや時差放送を行っており、これも4K単独の魅力や価値を下げる一因だろう。4K画質といっても2K番組と比較すると若干靄がかかったような印象の画で、テロップ部のノイズ(濁り)が4Kでは全くないといった程度。結局アナログ→ハイビジョンへの移行のような画質面のメリットはさほどないのだ。

BSの縮小によって民放各局も番組制作費の削減が相次ぐ中、さらなる影響が製作会社に及ぶともいわれる。製作会社の8割以上が減益という話もありそれほどBSでの恩恵が大きかったようだ。ある意味今回の再編で制作力が低下し、テレビ全体の衰退につながるのかもしれない。


NHKは4K放送をなんとしても普及させたいようだがコンテンツ面からみてもその思惑が外れ、BS自体の視聴者が減少する可能性が高い。このままではBSの契約者減少にもつながるのではないか。「良質で魅力ある放送コンテンツの製作・流通を促進」を打ち出しながら、再放送やひな壇番組でお茶を濁すようでは視聴者を欺いているに等しいだろう。


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