NHKBSどこへいく
NHKBS。従来のBS1、BSプレミアムという2K放送の2チャンネル体制がNHKBSと1チャンネルに統合し、実質プレミアムは4K移行してもう10か月。
しかし番組編成が貧弱となったことは否定できず、特に2KであるBSはスポーツ中継に圧倒され通常番組も激減。
BSも観るものがないと思ったところにこんな記事。
読売新聞だがbsの再放送の多さを取り上げた。
初回放送を見逃す視聴者のために、NHKはもともと再放送枠が多かった。それは1970年代でも同様である。放送枠を埋めやすいという局側の事情もあ大きかった。みると本放送1回に対し、再放送が1回・2回ほどというパターンが多い。 当時はその後VTRを消去していたケースも多いはずだ。近年は過去の番組を改めて見たいという要望が一定数寄せられているようで、放送・番組に関して寄せられた意見や問い合わせのうち、ここ数年は5~8%が再放送関連という。
連続テレビ小説が総合テレビで昼に、NHKBSでは朝に過去作が放送されている。視聴者要望を反映した結果であれば、こうした取り組みも評価される。
■ BSの編成をみる
しかし同記事はそこではなくBSの再放送が急増したことを指摘している。昨年12月にBSチャンネルが一本化された。内容は変わらず見ごたえもあるという“凝縮”がアピールされたが、それでも以前見たという番組にお目にかかるケースが多く、あまり凝縮感は感じられない。
記事では例として10月1日のNHKBSの番組表を挙げているが、「美の壺 選」(午後5時30分)、「鉄オタ選手権 選」(同6時)、「世界ふれあい街歩き 選」(同7時)、「新日本風土記 選」(同8時)と、視聴者の多い夕方以降の時間帯に実に3時間半にわたって「選」がついている。
同じく例として6月10日のBSをみてみた。昼以降の番組を見ると
選やアンコールとつく番組が5つ。クラシックもそうだ。この日ワイルドライフは初回放送のようだが選であることも多い。さらにシネマ、はじまりは古都にあり 京都極上カルチャー図鑑、浮世絵ミステリーも2023年の再放送、百名山は4Kの初回放送で2Kでは初というものである。純粋に初回ではない番組は9つ。
11日を見ると午後だけでも6つ、連日このような編成で月~金まで30番組ほどは全くの初回ではない番組である。土曜を見るとスポーツが多いがこの日に限っては初回放送が多かった。
NHKクロニクルの番組検索サービスで、2024年4月1日から7月1日までにBSで選の付く番組を検索したところ、231件が該当した。4Kでは251件が該当。当然この中には英雄たちの選択など選の字がありながら~選ではない番組もあったが、1日2~3番組は~選とつく番組が放送される計算になる。実際には「再」のつくもの、選としないものもありもっと多くなるわけだ。
記事では、『視聴者の多い夕方以降の時間帯に実に3時間半にわたって「選」がついていた。「選」は次回作に視聴者を誘導することなどを目的に編成する番組のことだそうで、新聞の番組表にも再放送を示す「再」マークは記されない』とある。正確にみると、本放送枠の再放送が選であれば直近の放送分の再放送ではないようだ。毎週編成されている再放送帯には再が付く。このような違いがある。地上波番組がNHKBSで放送されることもある。これにも「再」マークはない。これは「地上と衛星で、放送波をまたがる番組を放送する場合は、再放送マークはつけていない」という見解のようだ。
再放送が増えたのはbsばかりではない。地上波である総合、Eテレも急増。おとなの人形劇、Eテレタイムマシンなどがアンコール枠。これは名番組もあり、要望に応えたものと評価もできるが、趣味どきっ、きょうの健康、美の壺といった通常枠のものも~選が増えた。きょうの健康などは月の半分ほどは再放送のようだ。さらにラジオの番組をスタジオ撮影し、テレビで放送するという枠も新設された。
この再放送バーゲンセール。要因として予算減が大きいという。
24~26年度の経営計画では、昨年10月からの受信料1割値下げによる収入減を踏まえ、支出抑制。27年度には、23年度予算の約15%にあたる1000億円を削減する目標を立てている。これによって番組制作に響いているようだ。今年度は国内放送に3246億4000万円余りを支出している。
一方でメジャーリーグに180億円、大相撲にも1場所4~5億の30億円ほどを放映権料として支出しているといわれる。一体適正なのだろうか。
■「再放送」以外のBS
このしわ寄せは五輪放送にも影響したようだ。今回のパリの場合、BSでは16時台から翌朝6時ごろまでを放送枠としたが、同じく時差の関係で深夜が中心であった2016年のリオを見ると
8月2日の番組表
この日の場合午前中が10時間、午後も1時からすべて五輪枠で9時55分からの放送は翌日午前の3時45分までとなっている。つまり終夜で全日放送に近い。これには東京五輪を盛り上げる目的もあったが、現在をみると放送枠が減少した。今回でもマイナーな競技の放送は激減し、トライアスロン、近代五種、自転車競技などは放送されていないはずである。 パラリンピックも同様で有力選手が出場しても放送なしのケースがあった。
2K放送、これまでのBSがつまらなくなった。翻ってBSプレミアム4K、つまり4K放送が目新しいものを提供しているかと思えばそうともいえない。ある日の番組表を見ると
クラシック俱楽部、こころ旅、グレートネイチャー、百名山、ネコ歩き、新日本風土記と2K放送でも視聴可能なものが目立つ。4Kのみの番組はプレミアムカフェぐらいだが、これは過去の番組をアーカイブスで再放送という観点では同じ。 画質がアナログの番組も多く、正直なぜ4Kのみとしたか疑問にも思う。
4Kは画質の優位さを訴えるが、視聴者へのアピールポイントは画質ではなく内容である。同記事でも問題視されているのはその点である。
しかしNHKは内容の勝ちから目をそらし、視聴者を誘導しようという意図がある。 バラエティ型の番組も増加した。公共放送の意義の一つとして教育番組や福祉番組、古典芸能番組など、市場性や視聴率だけでは計ることのできない番組の制作を挙げているが、このようなジャンルの番組もバラエティ化し、かつてのような形では減少の一途。 受信料値下げとはいえNHKの存在意義が問われてもやむをえない。
BSに限らず地上波もスポーツやエンタメといわれるジャンルが増加しているが、関心のない人間からみると受信料が潤沢に使用されることに不満があるのは当然だ。見たいものに金を払い、見たくないものには金を払わないのが自然で、現状見たくないものが多くを占めるようになったことも批判の一因と愚考する。そういったジャンルを分割し、民間と競合することがNHkへの批判を減らす一歩と思うがどう動くのか。
テレビ離れも目立つ現在、 4K含めてBS、さらにはNHKはどこへいくのだろうか。現状では早晩行き詰まる。