ヒロアカの轟家の火傷に関する考察

 久しぶりにヒロアカを見た。気づけば漫画は最終回を迎え、アニメはあと少しで終わるところまで来ているらしい。個人的には本筋であるデクとAFOの決着以上に、轟家をどう締めくくるのかに興味があった。今回は、その中でも特に気になった轟家の「顔の火傷」の描写について所管を述べたい。

 燈矢を止める際に轟家の面々は火傷を負った。エンデヴァーはほぼ全身に、冷と冬美と夏雄も顔に見るからに一生消えそうにもない火傷を負った。火傷の程度は冷が最も酷く、次いで冬美。夏雄もあるにはあるがあまり目立たないレベルといったところだ。

 思うに、この火傷の程度は轟家の「業」を表しているのではないかと思う。作品内でも度々触れられた「見る」と言うキーワード。轟家は兎にも角にも「見ない」人間が多い。初期の焦凍は母親を避け、ヒーローとしての父親を見なかった。冷はエンデヴァーの面影を避け、冬美と夏雄は荼毘が正体を表すまで家庭の問題に真剣に向き合っていたとは言い難い。そしていうまでもなく、エンデヴァーはありとあらゆる家庭の問題から目を逸らし続けていた。多かれ少なかれ見なかった度合いによって、各々のツケを払わされたように感じる。

 一部の人からは冬美と夏雄は責任はないと言う意見もある。たしかに、冬美と夏雄がエンデヴァーの病室で語った「何かできたかもしれない」という告白は結果論にも思えるし、何か行動したところであのボロボロの家庭環境を子供たちだけでどうにかできたとは思えない。が、その結果、彼らよりも幼い焦凍に一層の重荷を背負わせている感は否めない。エンデヴァーが冷を殴った際も、冬美と夏雄が部屋の隅で耳を塞ぎながらうずくまっていたのに対し、焦凍はエンデヴァーに一人で立ち向かっていた。幼稚園児ほどの体格しかない子供が、195cmの大男に立ち向かう時の心情を考えると、なんともいたたまれない気持ちになってくる。

 そして燈矢。作品を通して一貫して最も火傷を負った人物。轟家の闇の影響を最も強く受けた受けたキャラではある。時が経てば経つほど火傷が増え続け、しまいには全身火傷により生きてるのが不思議なくらいの重症を負うことになってしまった。エンデヴァーの被害者ではあるものの、ヴィランとして犯した罪は到底擁護できる物でもなく、最も業が深いのは間違いがない。

 焦凍は元から火傷を負っていたと言うメタ的な要素はあるかもしれないが、それを抜きにして考えれば、今まで家庭環境の不和を焦凍一人が抱え込んでいた中で、その責任を家族全員で痛み分けした結果だからこそ、焦凍が新たに火傷を負うことはなかった。そうでなくても、今までの焦凍は重荷を背負いすぎた。

 正直な所、私は轟家の問題を語るにあたって、エンデヴァーの責任が最も重いことに異論はないが、他三人に対して「完全な被害者」としての見方には疑問があった。特に冷は、精神的な問題があったとはいえども、焦凍に一生消えない傷を負わせたのは事実だ。このままあの3人が無傷で終わったら、結局貧乏くじを抱え込んだのは焦凍ということになる。多くのクリエイターが「理由があったからしょうがいない」として棚に上げてしまいそうな過去を、こういった形で「けじめ」としてつけさせる堀越先生の手腕には賞賛を贈りたい。

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