縺合のシュレーディンガー 4話「火桐の本気」

雨脚と、風の勢いが強くなっていた研究施設の屋上。

ゼノンはその先端に立ち、目立つようにわざと体を発光させていた。
そのため、悪天候の中でも一人平然と腕を組みながら眼下を見下ろすことができていた。
それに吸い寄せられるかのように、すでに研究所の中には大勢の火桐の手下が侵入し続けていた。

「さてと、ここでこいつらの士気を失わせておけば、奴を追い込むのは時間の問題だ」

ゼノンが色々と策を練っていると、屋上にも手下が集まりだしてきた。

「きさまか!亡霊かなんだか知らんが、火桐先生に楯突く者は、誰であろうとただでは済まされんぞ」

雨に濡れながらも、手下たちは周りを囲み始め、各々が銃を向ける。
もう後がないゼノン。

「観念しな!万が一飛び降りたって、下にもわんさと銃を向けて待ち構えているぜ」 

ゼノン、下の様子を伺ってみる。

「さっさと成仏しな、亡霊さんよ。」

手下たちの銃口から、無数の銃弾が放たれた。
ゼノンは、それと同時に体を発光させたまま屋上から飛び降りた。

下で待ち構えていた手下たちも、ゼノンに向かって銃を乱射し始めた。
銃弾をものともせず、建物の三階辺りで身体の向きを変え、近くの開いている窓から中に入り直すゼノン。
研究施設の中、長い廊下や各部屋にも手下は大勢いて、ゼノンを仕留めようと躍起になっていた。
ゼノンが階段を下っていると、ちょうど両端から狙われてしまう。

「バカヤロー!こんな狭い場所で放ったら相打ちになるぞ!」

手下同士の放った銃弾は、ゼノンの体をかすめ、お互いを打ち合おうとした。

「くそったれ!こっちは、お前らと戦う気などないのに!」

ゼノンの体全体がさらに強く光り、周りの銃弾を全て消し去った。
二階から一階へ向かう途中でも、執拗にゼノンを狙う手下たち。
手下の一人が放った銃弾が、ゼノンを襲う。
だが、ゼノンの背後には、背を向けている手下がいる。

「お前ら、いい加減にしろ!」

ゼノンが、背を向けている手下の盾になり、銃弾は砂のごとく消えた。
天候が酷くなる中、ようやく研究施設入り口近くまで来れると、既にその周りには、無数の手下がいてゼノンはすぐに取り囲まれてしまった。

「これ以上、無意味な戦いは止めろ!」
 
まだ、ゼノンに銃口向けられていた。

「お前ら、まだわからないのかー!」

ゼノンの体全体がまた強く光リ始めると、手下たちの持っている銃が次々と、砂のように手元から消えていった。
その光景に、驚いて逃げ始める手下たち。
その時、正門の方から大きな音を立てながら大型重機が現れた。

「いくらお前でも、これは消せまい。さあ、覚悟しな踏み潰してやる!」

轟音を立てながら、ゼノンに向かって重機を走らせる手下。
何もせず、その場に突っ立ているゼノン。

「オラオラ、どうした!もうおしまいかい。なら遠慮なく行かせてもらうぜ!」

重機は、ゼノンの上を通過して行った。

「ど~れ。どんな姿になったかな?」

重機の向きを変えて、手下はゼノンの様子を確認しようとした。 
しかし、重機の通った場所には、ゼノンはおらず、辺りを探す手下。

「この俺を、なめるんじゃない!」

ゼノンは、重機の背後に回っており、両手を押し付けるようにして、重機を消し去ろうとする。
その時、背後で轟音がしたかと思うと、バズーカ砲の砲弾がゼノン目掛けて発射された。

ゼノンは、重機もろとも爆破されてしまった。

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