ひとことはなし99
2020 11 7
店長さん。僕を不憫に思ったのでしょうか?
それとも「こいつ毎日来やがって。うっとおしい」
の方が正解かも。
それからは僕らが行くと、総菜パンを箱に入れて
「持って帰れ天理教」と、どやされながら頂いて帰りました。
ある日店長が不在の時があり、今日は無理かなと思って店員さんに言うと
「これ店長からです」と、大量の総菜パンを持たされました。
「こんなに頂けません」と言うと
「頼みますから持って帰ってください。でないと、私が店長に怒られますから」と。
後日店長に合うと
「また来たんか天理教」と、どやされましたが、その後、年明けに開催される御本部お節会にお誘いしました。すると「よっしゃ行ったろ。それいつや」と、口は悪いのですが、お節会に出てくれました。
店長が乗っていた車はハコスカ。ものすごいエンジン音で来てくれました。
店長がその時こう言いました。
「実は俺の親も天理教やねん。俺はせんけどな。お前らにパンをやるのは、せめてもの親孝行やと思うからや」と説明してくれました。
口は悪いが性根はとても人情にあつい親孝行の方でした。
なので布教実修期間中、僕と相方は、とても良い物を毎昼食べて通る事ができました。
それから数年がたち、あの時の恩返しをしなくては、とスーパーに行くと
そのパン屋さんはありませんでした。その後の情報では奈良県斑鳩でパン屋を開いている、と分かりました。
斑鳩にはパン屋が乱立していて、片っ端から電話して尋ねました。
すると
店長さんにつながりました。
「その節は本当にありがとうございました。今度そちらへ行きたいのですが」と言うと
「来んくてええわ。お前まだ天理教やっとんか。もう来るなよ」ブチっ
と電話を切られました。
相変わらずの対応でしたが、そこには親孝行をする店長さんの姿が思い浮かびました。続く。
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