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絶叫系克服体験記① ハリウッドドリームザ・ライド

あなたは絶叫系は得意だろうか。


私は苦手「だった」


幼い頃は家族で旅行に行っても絶対にジェットコースターには乗らなかった。


いや乗るまいとした。


結局勢いに乗せられて乗ってしまうと、死ぬほど後悔した。


特に落ちる瞬間のあのフワッとした感じ。


あれが死ぬほど嫌いだった。


そんな私だが、今では日本一の高さを誇るスチールドラゴンに1日で3回も乗れるほどだ。(※ナガシマスパーランドにある、観覧車より高い位置から落ちるジェットコースター)

つまり、日本には私を脅かすコースターはもはや存在しないといっていい。

何故私が絶叫系を克服したのか、そして絶叫系を楽しむためのコツをお伝えしよう。


まず何故絶叫系に乗れるようになったかだが、転機が2回ほどあった。


2回とはいうものの、ともに理由は「彼女にかっこつけたかったから」だ。


異性への承認欲求は時に絶大なパワーを発揮するものだ。


1度目は高校生のとき。


私は関西在住だったので、ユニバに年に何度か足を運んでいた。


いわゆる「年パス勢」である。


当時の年パスは2回も行けば元が取れる価格だったため、高校生の私にとっても手が届いたのだ。


ユニバーサルスタジオジャパンには、2大コースターが存在する。


ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド(ハリドリ)、そしてフライングダイナソーだ。


私の絶叫系克服紀は、ハリドリから始まる。


当時硬式テニス部に所属していた私は、テニス部の面々とハロウィンの時期にユニバに行った。


ユニバに足を運ぶのはこれが初めてではない。幼い頃は絶叫系に乗らず、スパイダーマンやバック・トゥ・ザ・フューチャーなどのアトラクションを楽しんだものだ。


その日の目当ては、そういった昔からあるライド。それからハリー・ポッターやハロウィン限定のお化け屋敷である。


私の家はホラー英才教育一家だった。幼稚園の頃の私にホラー映画を見せまくって、トラウマを植え付けるほどだ。


そのおかげもあってか、小学校を卒業する頃にはほん怖や夏のホラー特集を冷めた目で見れるほどになっていた。


しかし、絶叫系は別だ。


あれは命に関わる。


いくらホラー映画を見ようと、お化け屋敷で演者に追いかけられようと、死ぬことはない。


しかし、ジェットコースターでは実際に死亡事故が起きているではないか。


だから、絶叫系には絶対に乗らない。


それが私の理屈だった。


一方で、わたしには当時お近づきになりたい女子がいた。


学年でも有名なバレー部の美人女子で、文化祭で連絡先を交換したのをきっかけにラインのやり取りを続けていたのだ。


その子は、ユニバ年パス勢でジェットコースターが大好きとのことだった。


コースターには乗りたくない。


乗りたくない。


けど、バレー部のあの子をユニバデートに誘いたい。


誘ってオッケーをもらえたならば、きっとジェットコースターに乗ることになるだろう。


その時にあられもない姿を見せて好感度を下げたくない。


なら、今日は絶叫系克服のチャンスなのではないか?


いや、やっぱり乗りたくないな。


そんなことを考えていると、次はハリドリに乗ろうという流れになった。


「俺は乗らん!絶叫系よりお化け屋敷に行こうぜ」


そう提案したのだが、大ブーイング。


そう、実は絶叫系が苦手な人間よりもお化け屋敷が苦手な人間の方が、統計的に多いのである。(私調べ)


「今のハリドリ、松岡修造が応援してくれるらしいで」

『嘘やん!じゃあ行こ!』


流れは一瞬で変わった。


私はテニスをしていたこともあり、松岡修造が好きだった。


それに、高校生ということもあり、「ノリ」を大事にしていた。


知らない人もいると思うが、ハリウッドドリームザ・ライドという乗り物は、ジェットコースターに乗りながら音楽を聴けるのだ。


その時は松岡修造がユニバの公式アンバサダーになっており、曲の1つに松岡修造が応援してくれるものがあったのだ。


内心怖い気持ちの方が大きかったが、行くと言った手前そこからは引けず。


夕方頃、地獄へのカウントダウンが始まった。


そして、いよいよ我々の順番が来た。


当時の仕様なのか今もそうなのかは分からないが、音楽が鳴るまでは「ドクンドクン」という心臓の音のような、花火にも聴こえるような音が鳴っていた。それが余計に私の恐怖を増幅した。


パネルを操作し、修造の曲を選ぶ。


頼むぞ、お前だけが頼りだ。


お前の応援で今日までやってこれたんだ。


今日もきっと大丈夫。そうだよな?修造。


コースターは進み始める。


歴戦の猛者達は、並び列の人達に手を振っていた。


それとほぼ同時に、私は恐怖に耐えられず目をつむる。


修造「僕が、せーのって言ったら『リボーン』って叫ぶんだ。来るぞ!」


目は開けていなかったが、ファーストドロップの訪れが迫っていることを直感させた。


ガタガタガタガタ


くる…


「うわぁあああ!!!!!!リボーン!!!!!!!」


その日園内にいた人間で、誰よりも大きな声で野太く叫んだ。


幼い頃から避け続けたあの浮遊感。


最大級のそれが私を襲う。


「リボーン!リボーン!リボーン!リボーン……ハァハァ……リボーン!」


叫びすぎて途中で息切れする場面がありながらも、私は修造の言葉通りに叫んだ。


「リボーン!リボーン!リボーン!リボーン!リボーン!リボーン!…」


やっと終わった。乗り物の歩みが止まったとき、死の恐怖から私の脳内はアドレナリンで満ち溢れていた。


「うっひょ~!!楽しい!!!」


乗っている最中は恐怖しか感じなかったのだが、恐怖から解放された私はアドレナリンに支配されていた。ジェットコースター=快感と脳回路を書き換えつつあった。


テンションが上がりすぎて、クラスの女子に電話しまくるという思春期特有のキモ行動に出たことはどうか見逃してほしい。

コツその1 喉が引きちぎれるほど叫ぶ

長くなったので、次回フライングダイナソー編に続く。

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