絶叫系が苦手な私がスチールドラゴンに1日で3回乗った話
三重県の長島にある、ナガシマスパーランドはご存知だろうか。
西の富士Qとも言われる、絶叫系だらけのテーマパークである。
絶叫系だけで15種類くらいあるナガシマの中で、最も人気が高いのが「スチールドラゴン」だ。
鉄の龍の名を冠するこのアトラクション。
全長2479m(世界一)
最高点97m・落下距離93.5m (ビルで言うと地上50階くらい)(園内の観覧車より高い)
最高速度153km/h(一般的に怖いとされる大体のジェットコースターが90km/h前後)
という悪夢のようなジェットコースターである。
私は元々絶叫系が苦手なのだが、絶叫系好きの彼女のために今回スチールドラゴンに挑戦することになった。
何事も慣れだ。そう思った私は、この日に向けて研鑽を積んで来た。
東武動物園のジェットコースター「カワセミ」「レジーナ」やよみうりランドの「バンデッド」、東京ドームシティの「サンダードルフィン」など、段階を踏んでジェットコースター修行をしてきたのだ。
さらに事前にスチールドラゴンの実際に乗った時の映像をYouTubeで見て予習もしていた。
さあ準備万端。かかってきやがれという気持ちにもなってきていた。
そんな中、最初に面食らったのが宿泊先の名古屋からナガシマスパーランドに向かう途中のバス内での出来事だ。
窓からジェットコースターを3つ見つけたと思い、さすがナガシマ、ジェットコースターだらけだなあなどと思っていた。
しかし、近づいてみて騒然。
遠目には3つのジェットコースターに見えたそれは、全てスチールドラゴンのレールだったのである。
さすが世界一。これにはおったまげた。
さらにバスから降りて園内に踏み入れたとき、どこを見渡しても絶叫系だらけのその景色にめまいがした。
心臓は高鳴り、ここに来たことを後悔した。
しかし、彼女の手前ここで芋ひくわけには行かない。
覚悟を決めた私は、まず「アクロバット」という別のコースターに乗った。
ユニバのフライングダイナソーと同じく、仰向けになって乗る宙吊り式のコースターである。
何故最初にこれを選んだかと言うと、この手のコースターは落ちないようにガチガチに固められるため、見た目ほどの浮遊感や恐怖感がないことを知っていたからである。
しかしやっぱり怖いので、アクロバットに乗った最初、私は激しく後悔した。
同時に自分を鼓舞するため、「いけるぞいけるぞいけるぞいけるぞいけるぞ」と念仏の用に唱え続けた。
ファーストドロップの瞬間、私の恐怖は爽快感に変わった。
思った通り、装備がしっかりしているため浮遊感はさほどなかったのである。
数分間の空の旅を終え、私の脳内はアドレナリンを出しまくっていた。
この状態に入ればこっちのもの。
いわゆる「ジェットコースターハイ」である。
今日は絶叫系祭り。
いつアドレナリンが尽きるか分からないため、さっそくスチールドラゴンに乗ることにした。
並んでいるうちにアドレナリンも切れ始め、やはり激しく後悔した。
我々の順番が来たとき、安全と安心を確保するため、ももが腫れ上がるほどにきつく安全バーを下ろした。
だがなんとこのスチールドラゴン、化け物級のスペックを誇る癖に左右が覆われていないのである。
頼れるのは腰あたりに押し付ける式の安全バーのみ。
ドラゴン型の安全バーに命を託してハラハラしていると、スタッフの人が確認する。
「頭ー?オッケー!
安全バー?オッケー!
準備ー?オッケー!」
全くオッケーではないが、確かそんな合図だった気がする。
ギネス認定のアトラクションは、以外にも静かに進み始める。
個人的に一番の恐怖は、ファーストドロップの直前だと思う。
ゆっくり進む龍は、着実に観覧車の高さを超えてゆく。
いっそ早く落ちてくれとさえ思うが、上りだけで一分もある。
念願のスチールに乗ってテンションが上がった彼女が話しかけてくるが、私はただ念仏を唱えるばかりである。
一分ほどたった頃、ファーストがそろそろやってくる。
命の危機を感じながら、安全バーを持つ手に万力をこめる。
くるぞ!くるぞ!来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来る来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ来る…キターー!!!!!
約100mからの落下は、以外にも爽快感を伴うものだった。
そこからなんども高所からの落下を繰り返すなかで、私はアドレナリンハイになってきた。
最後の上昇と落下をこまめに繰り返すゾーンでは、手すら上げていた。
以外にも、日本最大級の恐怖は、日本最大級の快感に変わっていたのである。
乗り終わってすぐに私は言った。
「楽しかったね!あとでもう一回乗ろう!」
最大級の恐怖を早々に乗り越えた我々はその後、一説によるとスチールすら凌ぐ絶叫を味わえると噂の白鯨にも乗った。
確かにファーストドロップがほぼ垂直で中々の恐怖だったが、個人的にはやはりスチールドラゴンが一番面白い。
勢いに乗り、園内のほぼ全てのアトラクションに乗った我々は、最後にスチールに2回連続で乗ってその日は幕を閉じたのである。
スチールに乗るかどうか迷っているなら、安全バーをくっそ閉めればどうにかなると言っておく。
あなたの絶叫ライフに幸あれ。