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『ヒカルの碁』に人生を狂わされただけの話

 人生において最も影響を受けた作品は「ヒカルの碁」で間違いない。

 平安時代の天才棋士、藤原佐為がただのガキンチョだった進藤ヒカルに取り憑き、やがて共に囲碁を極めようとする物語。

 少年漫画で、しかも王道中の王道であるジャンプで囲碁を取り扱う漫画が現れることを一体誰が予想できただろうか。

 しかもそれは何千万部と売れる超話題作となった。囲碁界の歴史に新たな1ページを作った上に、漫画史でも永遠に語り継がれてもおかしくないこの偉業には天晴れという他ない。

 さて、私はどうしてこの作品を見て碁を打ち始めたのだろうか。

 やはり一番は主人公、進藤ヒカルの成長に心打たれたからだろう。
 そこらへんにいるただの子供が、将来的に囲碁界の頂点に君臨する可能性が高い有望な棋士にまで登り詰めるサクセスストーリー。
 その過程にある苦難と大きな成長の連続。
 進藤ヒカルの驚異的なポテンシャルの高さ。
 佐為というチートツールを利用せず、自分で打ちたいという囲碁に対する強い想い。

 こうしてみると、自分もこうなりたいと思わせる要素がてんこ盛りだ。

 実際私もヒカルに憧れて碁を打ち、何度か大会で良い成績を残し、今や県強豪の一歩手前、棋力にして五段まで力をつけることができた。

 やはり、勝負の世界は素晴らしい。私はもう勝負の世界特有のピリピリとした空気を吸うことでしか生きることができなくなった。
 …ヤバい道進んでない?お前。

 ヒカルの碁はこれほどまでに私の人生を狂わせた。もしヒカルの碁という作品がなかったら私は一体どんな道を歩んでいただろうか。全く想像がつかない。

 ただ、私は囲碁そのものを題材にして漫画を描く気はない。私は知りすぎた。
 ああいう競技ものは、完全な素人がプロの監修のもとで作った方が迫力ある作品になると思う。ヒカルの碁がそうであったように。

 しかしNARUTOで将棋を指すシーンを見て将棋を始めた人が一定数いるように、私もどこかで囲碁の対局シーンを入れることで棋士を目指す人間を生み出したいなとは思う。

 囲碁に限らず、私もヒカルの碁のように自らの作品で誰かの人生を良い意味で狂わせてやりたい。

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