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ローリー・アン・フリーマン「記者クラブ」緑風出版


「新聞と報道メディアが日本ほど画一的なニュースを流している国は資本主義国の中でも本当に珍しい」

カリフォルニア大学准教授である著者が、日本の「情報カルテル」の実態を客観的に記述した一冊。面白い!

メディアは「現実の社会的構築」において中心的な役割を持つが故に強力な存在である。日本は新聞購読率もテレビ視聴率も高いのに、報道が画一的になっているというのは一体何を意味しているのか。これは深刻な「情報カルテル」化の進行を意味している。

日本の報道において報道機関と取材源、報道機関同士の奇妙な関係性が指摘されているが、これは看過できない事項だ。著者は日本の情報カルテル化のプロセスのポイントを3つのKで説明している。

①記者クラブ②新聞協会③メディア系列である。

この強力なカルテルによって報道の多様性を拒否し、報道を均一化させ、報道を独占してきた。これを放置するということは「思考停止社会」を生むことになる。こういった指摘を日本国内の学者でなく、アメリカの学者が指摘しているあたりが病理の深さを表しているのではないだろうか。

実際「記者クラブ」の病理について分析している研究書は驚くほど少ないのが現状なのだ。以下、重要な部分をメモとしてのこしておく。

<資本と情報における緊密な関係性>
○読売新聞-日本テレビ-NNN  
○朝日新聞-テレビ朝日-ANN
○毎日新聞-TBS-JNN     
○日経新聞-テレビ東京-TXN 
○産経新聞-フジテレビ-FNN   
○NHK

<メモ>
・日本の報道は記事の力点も書き方も驚くほど似ている。

・記者クラブ内では取材の自由競争は存在しない。日本には1000の記者クラブが存在する。

・各メディアは取材源との間に収賄が存在する。

・公正取引委員会ですら記者クラブを設けている(明らかな不公正)。

・日本における知のカルテルとは①大学制度②司法制度③取材システムである。

・日本の報道機関はお上の意思に叶うもの以外は徹底的に排除された。こういう土壌で育ったメディアは形は「不偏不党」を装っているが、実のところお上の意思伝達ツールになり下がっているだけだ(政府の番犬)。

・明治時代の2回の戦争と関東大震災は「朝日」「毎日」に大きな恩恵をもたらした。

・戦時中、「朝日」はジャワ島報道・「毎日」はフィリピン・「読売」はビルマという具合にその立地を確固たるものとした。「合意の捏造」統合システムが構築された。

・「黒板協定」:会見やブリーフィングのスケジュールが予め決められている制度

・「報道協定」:メモあわせも含め、特ダネを事実上生まない制度

・政治部記者は政治家の不正を絶対に告発しない。これをやるのは社会部の記者だ。取材源との親密性が自由な記事を書きづらくしている。

・坂本弁護士一家殺人事件の原因提供者は実はTBSテレビだった。

・皇太子の結婚について最初に知ったのはアメリカ市民だった。日本では宮内庁とメディアがスクラムを組んで報道しなかった。


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