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田島木綿子「クジラの歌を聴け」山と渓谷社

「ザトウクジラの歌に涙腺崩壊!」
と国立科学博物館動物研究部の研究者である筆者は興奮気味に語る。
クジラだけでなく動物たちの求愛活動、種を維持するための活動を事細かに綴っている。興味深い話の連続だ。

ザトウクジラは秋を迎える頃、約30~40トンの巨体を揺らしながら、時速5~15キロで大海原を泳いで5,000キロメートル先のハワイや沖縄、小笠原諸島という海域へ向かう。その道程で求愛のためのソングを作り上げていく。このソングは音の構造も複雑で、発声法もいまだに解明されていないそうだ。このソングはなんと3,000キロメートル先まで届くというから驚きだ。実際YOUTUBEで聞いてみたら、ゾウのような声が出たり、いくつかの音階にまたがってなんとも言えない叫びのような声だった。不思議だ・・。

筆者の話によると
「ザトウクジラのソングは、音に高低差や強弱があり、長い音や短い音の繰り返しで、楽器の中ではビオラやオーボエの音色を彷彿させる。ザトウクジラのソングを愛してやまない私は、その鳴音を聞くとすぐに涙腺が崩壊してしまう困った事態に陥る。」
のだそうだ。

このザトウクジラのオスの生態がとても興味深い。なんともジェントルマンで利他に満ちているのだ。どこまでも人間からの視点でしかないが・・。
交尾できなかったオスがなんとメスクジラとその子を、シャチの攻撃から身を挺して守りぬき、まるで何もなかったかのように、エスコートをし続けるというのだ。

人間が失いつつある世界をザトウクジラは太古の昔から繋ぎ続けている。
本著ではほかにもありとあらゆる動物の種の保存行動について紹介しているが、俺にはザトウクジラのことが強烈に残った。

ああ、また好奇心のアンテナが(汗) 直接聞いてみたいなあ、ザトウクジラのソングってやつを・・・。

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