劇場版ポケットモンスター第3作没プロット考(4000字)
首藤剛志(アニメポケットモンスター初期の進行担当)氏の証言
第210回 幻の『ポケモン』映画3弾……消えた
第211回 幻の第3弾から『結晶塔の帝王』へ
公開版前にあった初稿が没になったそうである
本筋は語られているが全貌は想像の域を出ない
"テーマは、「自分の生きている世界は何なのか?」である。
化石が進むことによって起きる様々なエピソードを、すべてそのテーマに結集させようとした。
そのエピソードの数々を考えるのに、ああでもないこうでもないと考えて、頭がおかしくなりそうだった"
化石の恐竜が意志を持ち、人間とポケモンの生活帯を破壊しながら進み続ける。
"では、「僕が生きているこの世界は何か?」
明らかに人間だけが生きている世界ではない。
人間とは違うものがいる、ある。
自分が生きている世界を知ろうとしたら、擬人化したポケモンでは描けない。
別の何かが必要である。
それが、「ポケモン」という架空の世界での、現実の過去に存在した恐竜の化石である。それが意識を持ったらどうなるか。
つまり、現実の世界で違う意識をもつはずの人間と動物を、架空の「ポケモン」世界における「現実のかつては生きていた化石」を通して描いてみようとしたのが、幻の『ポケモン』映画第3弾だったのである。
それで「自分の生きている世界とは何か?」を考えてみたかった"
人間とポケモンという作品世界を、"正体不明"の異をあてることで浮かび上がらせようとした。
化石の恐竜であるとはどういうことか。なぜ化石の恐竜でなければならないのか。
"ともかく、テイラノサウルスの化石を止めようと懸命になる。
かろうじて冷静なのは、「自己存在」テーマのミュウツーぐらいである。
そして、ティラノサウルスの化石が止まり、動かなくなったその場所は……。
その答えは、書かない。
動物とはなにか?
人間とは何か?
その違いと共通点を考えれば、それほど難しい答えではない。
それは、なにも『ポケモン』の映画でなくても、通用する"
"「いったいあれはなんだったんだろう?」「そして我々の世界はどんな世界なのだろう?」でエンドマークが出る。"
作者がかなりヒントを出している。重要な点は答えはあると言っている事、つまり答えが一意的に定まるという事である。理屈で決まるという事である
"ダーウィンの進化論はある。動物と人間の進化の過程を説明している。しかし、実際のポケモン世界に動物は人間とポケモンしかいない。いわゆる本物の動物はいない。
古い記録を調べれば、この世界に本物の動物がいた。だが今はいない。記録には残っているが、人間の記憶にないのだ。
ポケモンが、この世に発生した時期が定かでない。そして、ポケモンには進化論は通用しない。
なのに新発見のポケモンはどんどん増えていく。
過去に多くの学者が、ポケモンについて研究しているが、ある時期になるとぴたりと研究を止め、田舎にひきこもり、それ以上の研究発表をしなくなる。オーキド博士もその例にもれない。
どうなっているのだ?
記録には残っている動物(写真すらあるのに)が、人間たちの記憶から消えている。
そのことに疑問すら持っていない。
何かこの世界の存在自体に、大きな秘密があるのではないか?
人間たちはティラノサウルスの化石の発見に、自分たちの生きている世界がなんなのかに疑問を抱き始める。
しかし、そんな余裕はない。
ティラノサウルスの化石の目の部分に青い光がともる。そして、動きだす。一直線に、どこかを目指し、進んでいく。
その進路にある、人間の世界もポケモンの野生世界もおかまいなしだ。
川も海も一直線に越えていく。
ともかく一直線だ。
邪魔になるものは、すべて、踏み倒していく。
ティラノサウルスを止めなければ、ポケモンと人間たちだけの世界の謎を解くこともできない。
その進路には、主人公サトシのマサラタウンもある。
色々なポケモンの生活圏もある。
オーキド博士は、研究所をめちゃめちゃに踏みつぶされても「いつかこんな時が来ると思っていた。なぜ、こうなるのか分からんけれど……」
としか言わない。
実は、オーキド博士にも分かってはいないのである。「いつかこんな時が来ると思っていた」以外には……。
ともかく、一直線に進むティラノサウルスの化石を止めなければ……。
ポケモンも人間も、本能的にティラノサウルスの化石を止めようとする。
ティラノサウルスの化石を止めなければ、自分たちのポケモンのいる世界の存在が危うくなる気がするからだ。
なぜ、危うくなるのかその理由は分からないが、本能的にそう感じるのだ"
ポケモン世界の世界設定そのものが本筋にあるらしいと判る。作者は何を描こうとしているのか?
さらに
・最終回は人間とポケモンが対立する(をロケット団が仲立って和解する)
・4作目のプロットは全く浮かばない→ネタギレ
(当然創作物は作者による一連の時系列であり、特大のネタバレで有る)
情報は全て揃った。
以下追って説明したい(読みたい人はスクロールしてください)
1.ティラノはどこへ向かっているのか?
「一直線」である事が強調されている。どういう事だろうか?目的地に向かっているという事だけでなく、その行為自体が目的を充足していると稽えられる。すなわち単純に活動するだけで他の種の生物の生物圏を破壊し「自分たちのポケモンのいる世界の存在が危うくなる予想が本能的にする」させている。ここで作者の問い掛けからある事が浮かび上がる。("化石が進むことによって起きる様々なエピソードを、すべてそのテーマに結集させようとした。")
動物とはなにか?
人間とは何か?
その違いと共通点...
(作者による)ポケモン全体のテーマであるが、生きるとはどういう事かという事であり、そこに種の盛亡があるという事である
("擬人化したポケモンでは描けない。"→本来異種であるところのポケモンと共存する作品世界において、本作で初めて"異種間の生存競争"を描いたのである)
"古い記録を調べれば、この世界に本物の動物がいた。だが今はいない。記録には残っているが、人間の記憶にないのだ。"
"過去に多くの学者が、ポケモンについて研究しているが、ある時期になるとぴたりと研究を止め、田舎にひきこもり、それ以上の研究発表をしなくなる。オーキド博士もその例にもれない。
どうなっているのだ?
記録には残っている動物(写真すらあるのに)が、人間たちの記憶から消えている。
そのことに疑問すら持っていない。"
非常に難解な描写もこの筋で意味がはっきりする。これは絶滅した種は忘れ去られる事のメタファーなのだ。(メタファー:暗喩)
("「いつかこんな時が来ると思っていた。なぜ、こうなるのか分からんけれど……」"→絶滅可能性は種の宿命)
ティラノは実際に存在したらしい生物だが、ポケモン世界に於いてはもちろん全く分からない(メタ的に言うと作者が決める)。そういった「存在の可能性」そのものが"再帰的に"(万物は再起する)「存在そのもの」すなわちポケモン世界に於ける"覇者"になろうとしている"作用"が「化石のティラノ」に象徴されているのである。
「化石の恐竜」は「過去地上を支配した」のであり「現在地上を支配する事はない」のである。それが動き出すという事は天災的な脅威ではあろうが、生存した事を再現し続ける記憶媒体のようなものであって、現に人とポケモンが地上を席巻している事に設定上成り代わる事は出来ないのである。
一直線とは進化のラインのようである。他の生物に成り代わりながら、その歩みを辞める事は無いのだ。生物は自らの歩み方によって歩み、そこに優劣は無い。ここに人間•ポケモンと(幻影)恐竜との覇権争いが生じている 化石ティラノは「覇者だった事実を再現」するゆえに人間•ポケモンと対立関係にある "それは、なにも『ポケモン』の映画でなくても、通用する"というのは、ポケモンのレベルを超えた•超えようとする作品だからだろう
ティラノの目的地は自分が地上の覇者に成り代わる事、すなわち世界の中心であり、それは人間•ポケモンとの最終決戦の地であり、人間とポケモンが結集した地点、クライマックスの舞台だ。
"テーマは、「自分の生きている世界は何なのか?」である。
化石が進むことによって起きる様々なエピソードを、すべてそのテーマに結集させようとした。"
おそらく、ティラノという天災に対する失耗や自らの成長(ポケモン的に進化したりするかも知れない)、そして協働を描こうとしたのだろう 人間が弱点を見つけてポケモンがそこを突く-そして作者の宣告通りティラノは去ったのだろう
"「いったいあれはなんだったんだろう?」「そして我々の世界はどんな世界なのだろう?」"
2. 我々の世界は
私たちは協働によって生き遺ろうとする生存戦略をとっている生き物の世界を生きているのであり、
作者はこの作品で言わばポケモン世界の総決算(そして最終回の人間vs.ポケモンが描かれる)をしながら、
まぎれも無い私たち自身のリアルを描こうとしていたのでは無いだろうか。
お読みいただきありがとうございました
おまけ
イギリスのミュージシャン、Radioheadの楽曲「Optimistic」多国籍企業の席巻を語った曲、最後は
「Dinosaur loaming the earth」:恐竜が地球にひしめいている で終わる。
恐竜と異質なものによる支配とは結びつけられやすいのだらうか?。
奇しくも『結晶塔』公開のタイミングと1年違いである。
→訂正 なんと同じ年(2000年)でした。
付記
執筆中にこんなニュースが。
地球2.5億年後 人住めない環境か
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6476646
高温化して哺乳類は無理らしい
🌋
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?