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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か? 第二部 #6

6月4日、交流戦三カード目の初戦、阪神は甲子園で東北楽天と対戦。延長10回、抑えのゲラが2死から茂木栄五郎、小郷裕哉に適時打を浴びるなど精彩を欠き1対3で敗れた。試合後、ゲラとこの日出場が無かった大山の2軍降格が決定。虎党に衝撃が走った。

この試合、ショートのスタメンは小幡だった。前の試合、ロッテとの3戦目に続く今季8試合目となる試合頭からの出場。週頭(火曜)のスタメンは今季初で打順は「二番」。

結果は、楽天先発、ポンセの前に2打数無安打二つの三振、1犠打。三振はいずれも、150キロを超える速球に対応ができていなかった。

一打席目は全4球のうちストレート3球すべて見逃した。変化球を狙っていたのかは不明だが、いずれにしても速球のケアが必定の投手。消極的に見える印象の悪い打席となった。

二打席目は4回、無死3塁の先制の好機に打順が巡ってきたが、真ん中高め152キロの速球にバットが空を切る。

この打席は初球から5球まで全球スイングをかけ積極的な姿勢を見せた。4球目までの配球は、チェンジアップ2球フォーク2球といずれも変化球。2球目は空振りしたものの他の3球は打ち損じも含め辛うじてファールにしていた。おそらく、この打席は速球をマークしていたのだろう。カウント0-2で迎えた「釣り球」の速球にスイングをかけたが捉えられなかった。

三打席目は6回、1死1塁から今季4つ目となる送りバントを決めた。0-2と追い込まれてから148キロの速球を捕手前に転がした。打球の勢いをなくす巧みな「犠打」だった。

今季の小幡はこの日のような「犠打」が印象的だ。

巨人戸郷勝翔にノーヒットノーランを浴びた5月24日の試合も、9回無死1塁、緊張感漂う場面でバント失敗から2ストライクを取られた後に1塁線にボールを転がし犠打を成功させている。

この重圧がかかる「ピンチバンター成功」のシーンについて、スポーツニッポンの八木勇磨記者は『ヒリついた場面での活躍につながる、失敗を引きずらない冷静さ』と銘打った記事を書いている。

そこには「3球目にも同じ球種を見ていたので。もしフォークが初見なら失敗したかもしれないけど」と話す小幡のコメントが掲載されていた。

岡田監督の小幡の犠打に対する信頼度は、こうしたところにあると推測するが、打つことに関してはオープン戦からここまでまったくアピールできていない。

この試合終了後の打率は.184。38打数16三振で三振割合は35.6%にまで悪化している。これは阪神の野手の中で、小野寺、井上、熊谷に続いて4番目に高く、30打席以上で見るとワーストだ。

チームが極度の貧打で苦しんでいる状況、またショートのポジションを争う木浪聖也も昨年のような勝負強い打撃を見せられていない中、小幡にスタメンでの出場機会は巡ってはいる。

守備では6月4日時点、98回2/3で無失策が続いており、状況判断も的確で野選もない。犠打の成功率も高い。だが、バットにボールが当たらない、速球に対応できないのであれば、首脳陣は安打はおろか「ケースバッティング」すら期待しにくい。この状況を克服できない限り、今後も小幡のスタメン出場は限定的なものになっていく。

小幡は今季プロ6年目のシーズン。他球団に目を向けると、同級生の村松(中日)友杉(ロッテ)がショートのレギュラーポジションの座を手中にしている。年下世代では、入団3年目でレギュラーを掴んだ長岡(ヤクルト)は3割に挑戦。森敬斗(DeNA)は5月10日の昇格以来、存在感を発揮している。

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