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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か?#14

戸郷翔征にノーヒットノーランの偉業を許した翌日の試合、阪神は3対0で巨人に快勝。先発ビーズリーの好投にはじまり、石井、岩崎、ゲラの盤石リレーで締めた。この試合、木浪は先制点となる二塁打を巨人先発の赤星から放ち、試合後、お立ち台に上がった。

先制打は、初球カーブ、2球目ストレートを見逃した後の3球目。インコース148キロ速球系統の難しい球を得意の「捌き」で対応した見事な一打だったが、後の2打席はあえなく凡退した。

2打席目は4回、1打席目に続いて赤星との対戦だったが、「例のごとく」初球、二球目を続けて見逃し。カウント負けの状況から低めのフォークを打たされ二塁ゴロ。見逃した2球は球種は違えど、いずれもやや外目の甘いゾーン。どちらかを捉えたかった。

3打席目は7回、変則左腕、大江竜聖との対戦。この打席も初球、外角139キロの速球を見送った。続く2球目インコースの速球をファールにした後、3球目、4球目いずれも外角低めに外れたスライダーを見送り。並行カウントにしたものの、5球目のインコース低めの速球を木浪は「低い」と感じたようだったが見逃し三振。

この打席、甘いゾーンに来たのは初球のみ。「甘い球を見逃し、難しい球に手を出す」今季の打席の状態を、木浪はヒーローとなったこの試合でも変えられないでいた。

打撃でチームの勝利に貢献した木浪だったが、守備では今季7個目の失策を記録してしまう。5回、巨人泉口の強い当たりの遊ゴロを、ダイレクトではなくハーフバンドで正面から裁こうとしたが、打球がグラブの土手に当たり後逸した。

失点にはつながらなかったが、エラー7つはこの時点で巨人門脇と並んで両リーグワースト。1試合3失策を記録した4月26日のヤクルト戦から1ヶ月後に早くも4つの失策。二遊間を組む中野は今季も昨年同様、堅い守りをみせているが、木浪の今季の守備は「あの日」以降、いささか安定感を欠いてしまっている。

開幕から47試合を終え、木浪がスタメンで起用された試合数は「41」。

打撃に上昇の兆しが見られず、失策も多い。にもかかわらず、この状況は、外部から見ると、もはや木浪と小幡は「競争」ではなく「補完」の関係にあるようにすら感じてしまうここまでの゙岡田監督の采配。

阪神全体が貧打に喘いでいること、小幡の打撃に未だ進歩が見られないことなどから、木浪は今後もスタメンに名を連ねていきそうだが、「レギュラー確保」とは別の意味で、交流戦以降、攻守ともにパフォーマンスを上げていかなければならない事情が木浪にはあった。

今ドラフトの目玉「10年に一人の逸材」と評される宗山塁(明大)の存在がそれだ。

今年6月で30歳を迎える木浪にとって、自身のパフォーマンスの低下を球団に判断されてしまっては、自ら「若返り」を許容することになる。
宗山は今年3月、井端監督率いる侍ジャパンに招聘されたほどの実力者。仮に阪神入団が決まれば、同じポジションの木浪の立場が一気に危うくなることは想像に難くない。

木浪としては、何としても来期以降もポジション争いの競争の構図を変えたくない。そのためにも今シーズンは「昨年の自分に勝たねばならない」のだった。

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