【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か?#15
交流戦前の最後の試合、阪神は1対2で巨人に敗れた。9回に抑えのゲラが岡本に同点本塁打を浴び逃げ切りに失敗。続く延長10回、岩崎が丸に決勝の犠飛を許しカード負け越し。交流戦へ向けた景気付けにはならなかった。
試合後の岡田監督のコメントにあったように敗因は紛れもなく打線だった。この日阪神は6回まで無安打。7回に森下、大山、渡辺の3連打で1点を取るのが精いっぱいだった。岡田監督は野手陣に対して「前で打て」「泳いで凡退はOK」と指示していたというが笛吹けど踊らない。
岡田監督の記者へのコメントを読んでいると、阪神の野手陣が今季「真っすぐが打てていない」ことへのいら立ちが伝わってくる。このままでは、セ・リーグ以上に強い球、速い球を投げてくるパ・リーグの投手を打てるイメージがつかないという。
そうした中、木浪は現時点でストレートに適応できている数少ない野手だと感じる。この日の最終打席で巨人の抑えを担っている左腕バルドナードの153キロ速球を中前にはじき返した。
また、巨人先発の菅野に対した第二打席の右飛も140キロの外寄りのフォークを「前で」捉えていた。浜風によって右翼定位置で捕球されたが他の球場であれば、長打になってもおかしくない打球だった。
岡田監督が野手陣に求めている「速球打ち」「前での捌き」をクリアしている感のある木浪だが、今後、試合の終盤で代打を出されないようにするには変則左腕に対する打席の内容が重要になってくる。
そういう意味で、昨日の大江に続き高梨と対戦した第三打席はその試金石といえた。
この打席、木浪は初球、真ん中高めに入ったスライダーを打ちにいく積極性を見せた。二球目、三球目はいずれも外角低めのボールとなる速球を体勢を崩すことなく見切った。おそらく、この打席はインコースの速球を狙っていたのだろう。4球目の内側高めの速球をファールにし、その後の5球目。インコースのスライダーの曲がり初めにバットが当たってしまった。当たりは強くなかったが、体の前で振り切っていたために一塁線寄りにボールを運べていた。
結果は1ゴロで凡退も、岡田監督の目線で木浪のこの打席を振り返ると「内容のある凡退」ではなかったか。
一昨年の秋、就任したばかりの秋季キャンプで岡田監督は「ショートは打たんでええ」と話していたが、昨年からここまでの「八番・遊撃」の起用法を見る限り、額面通りに受け取ることは難しい。
憶測だが、あの言葉は就任時、メイン遊撃手として構想していた小幡竜平にプレッシャーを与えないために発したのではないだろうか。
だとすれば、昨年実績をあげたが今季開幕から低打率のままの木浪が起用され続けていることにも合点がいく。
「速球対応」「前捌き」といった岡田監督が現在、歯痒さを感じている打撃技術を木浪は備えている。守備を同レベルと見るならば「打撃が良い方」を起用するのは当然のことだろう。
安打を打つだけがレギュラーでは無い。打率が低くとも三振が許されない場面でバットに当てる、走者を進める、ファールで粘る等攻撃時チームに貢献できる技術要素を選球眼とともに持つこと。
これらは岡田監督率いる阪神に限らず、どの球団に属していても、野手が常時出場を果たすためにクリアしなければならないことだ。ショートの選手といえど避けては通れない。レギュラーへの道は実に険しい。
28日から交流戦が始まる。阪神の初戦は北海道日本ハム。相手先発投手は山崎福也と発表された。
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