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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か? 第二部 #1

5月29日。雨で1日順延となった交流戦初戦、阪神は2対8で日ハムに敗れた。

序盤からミスで失点し、常時、追いかける展開も拙攻が続いた。島本、岡留等中継ぎ陣もゲーム終盤に失点を重ねるなど、終始、試合の主導権を握れず、満員の甲子園はため息に包まれた。

この試合、木浪は守りで悔しいミスをした。

1死二、三塁、打者石井の二塁ベース前のゴロ打球を上手く捕球し、即座に体を回転させ本塁に送球したが三塁側に逸れた。結果、三塁走者と二塁走者の生還と打者走者の二塁進塁を許してしまった。記録は悪送球と野選。

このプレー、NHK野球解説者の田中賢介氏によれば、「木浪はできうる限りのベストのプレーをした。坂本捕手が本塁送球への準備が遅れたように見えた。」とのことだが、岡田監督、馬場コーチら阪神ベンチはどう見たか。

試合後、岡田監督の記者との一問一答には、自軍の拙攻のことが主となっていたため、阪神ベンチの2回表の木浪のプレー評は明らかにはなってはいないが、素人目には「攻めすぎた守り」に見えた。

予め前進守備を敷いていたとはいえ、打球の転がったゾーンや捕球体勢などを考えると、あの場面は本塁をあきらめ、打者走者をアウトにする選択が最適解だったのではないか。

これで、木浪の今季の失策数は両リーグワーストの8。そのうち失点につながったのはこの試合を含め実に6度。なかなか厳しい守備の状況だ。

一方、打撃に関しては、木浪は日ハム先発伊藤大海から2安打を放ち、調子が上向いていることを証明してみせた。

第一打席、伊藤はインコースに食い込むカットボールを多投してきた。全8球の内、外角に攻めた投球は最後の142キロのフォークのみ。木浪はこの球を中前にはじき返した。肩の開きが早く、外角球を常に引っ張る凡退の傾向が、この日は姿を消していた。

続く第二打席は、2球カットボールが続いた3球目のカーブを捉え、1.2塁間を抜いた。この打席で、昨年の交流戦から伊藤との対戦成績が5打数5安打となるなど相性の良さを存分に見せつけた。

個人的に興味を持って見たのが第三打席、杉浦とのマッチアップだ。

杉浦と木浪は今年3月2日、札幌ドームでのオープン戦で1打席対戦している。その時、160キロに迫る豪速球で押し通す杉浦に対し4球、5球と必死にファールで食らいつく木浪の姿と打撃技術が印象的だった。結果、13球目を右飛に終わったが、157キロの速球を芯で捉えての凡退。「速球対応ができている」と首脳陣に思わせたに違いない内容のある打席だった。

そのオープン戦から2ヶ月半後の対戦となったこの打席、初球はセーフティの構えだけ見せ、真ん中147キロの速球を見送り。2球目、3球目も真ん中高めの速球に押され三塁側へのファールが精いっぱいの状況。こうした中、日ハムの捕手田宮裕涼は1球フォークを挟んだ後、決め球にインコース速球を要求。木浪は152キロに詰まり捕邪飛で終わった。オープン戦の時とは異なり、今回は木浪の完敗だった。

続く第4打席は、アンダースローに投球フォームを変えて2年目の鈴木健矢と対したが、鈴木の制球が乱れ一度もバットを振ることなくストレートの四球。結果、この日は3打数2安打で打率は.230まで上昇した。

試合後、スポーツ紙に木浪のコメントがあった。野選と悪送球で2点を献上したことについて、木浪は「結果が結果なんで。しっかり送球できるように投げたい」と答えていた。

チームが敗れ、たとえ2安打しても失点につながる失策が大きく取り上げられるのはレギュラーの宿命。明日以降、取り返せるか。攻守ともに躍動するときはいつか。

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