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【プロ野球勝手にノンフィクション】『ショートは打たんでええ』は本当か?#13

交流戦前の最後の三連戦、阪神は甲子園で巨人と対戦。カード初戦の5月24日は、巨人戸郷翔征にノーヒットノーランを食らう歴史的な1日となった。解説者が口を揃えて絶賛していたように、戸郷は速球が走りフォークの切れ、スライダーの使い方いずれも絶妙で阪神攻撃陣はなすすべがなかった。

その中で、木浪は1点を追う9回、先頭打者で唯一の四球を選び見せ場を作った。

この打席、戸郷と岸田のバッテリーが組み立てた5球目までの配球は、スライダー、フォーク、ストレート、フォーク、スライダー。3球目の149キロのストレートのみ真ん中高めに配し勢いのあるボールでファールにさせて、その他は外角中心に攻めフルカウントとなっていた。

6球目、7球目いずれも150キロを超えるストレートをファールにした木浪は8球目フォークを選び四球を勝ち取った。これは、ストレートとフォーク半々の確率で待ちながら、ボールからボールになるフォークの軌道を見極めた結果と推測する。

この日、他の2打席は凡退に終わったが、1打席目は今季の相手バッテリーの木浪への配球とそれに対する木浪のアプローチが顕著に表れていた。

その打席は3球いずれも外角の組み立てで、球種はストレート、ストレート、フォーク。今季の木浪は、初球もしくは二球目の外角球を簡単に見逃しストライクを献上してしまう傾向がある。その後も引っ張りの意識を消さずに外角に来る変化球を1,2塁間に運ぼうとする。二直に終わった1打席目もそのパターンで、外角のフォークを無理やり引っ張り込んだ結果だった。

この試合終了後の木浪の打率は.216。開幕から2か月近くたっても一向に上昇しないのは、引っ張りの意識が強すぎて広角に打てていないことが影響している、そんな印象を強く受ける。技術的には、元広島監督の緒方孝市氏の言葉を引用すれば「肩の開きが早い」。

早々に「カウント負け」する構図を克服しない限り、現在の低打率の状況を打開することは難しい。腕をたたんでインパクトの瞬間に右腕一本で右翼へ打球を運ぶ「インコースの捌き」を十二分に示しているのだから、相手バッテリーがインコースを速い球で攻める確率は高くない。外角の変化球を中心に組み立ててくるのであれば、その球種を狙い、近本のようにショートの頭の上に運ぶ打席を増やさなければ打率は上がっていくことはない。

一方、守備に関しては失策にはならなかったが悔しい結果を招いた。巨人の決勝点となった1点は、オコエの二盗成功がきっかけとなった得点だったが、木浪は2塁ベース上、走者オコエへのタッチの際に落球をしてしまう。

捕手坂本からの送球がワンバウンドだったこともあり、グラブにしっかり入りきらないまま至近距離でタッチにいったことで、木浪のグラブが左から右へ微妙に振られた。その勢いでボールがグラブからはみ出たように見えた。

タイミングは「微妙」だったが、仮に落球がなければ「リクエスト案件」になっていたと思わせる場面だっただけに、木浪にとっては悔いの残る守備となったかもしれない。

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