海街 メモリー
私が生まれたのは海辺の小さな町
水平線を見渡せる丘にみかん畑
だいだい色のみかんが点々と実り
白い花が咲く時季は ほのかに甘い香りが漂う
岩場の多い海岸の小さな浜
磯の潮だまりをのぞいてみると
小さなカニやヤドカリ、ウミウシ、イソギンチャク
色鮮やかなメダカくらい小さな魚たち
透明度の高い青い海に半島の森の緑がこんもり
~ゆでたてのブロッコリーみたいに深く鮮やかな緑・・・
朝日が昇ると、細かい金箔を撒いたように海面がきらきら光って見えた
小学一年生の時、遠くの海のない街に引っ越したので
幼い頃のおぼろげな記憶しか残っていない。
ひょっとしたら、ぜんぶ私の空想で
もともと そんな風景はこの世のどこにもないのかもしれない・・・
そう思いつつ、試しに「私の生まれた街」の名前をネット検索してみたら
「岸の近くから急に深くなる『どん深』の海」
「日本でも屈指のダイビングスポット」
「原生林の生い茂る丘陵 大きな岩の多い海岸」
「岬の先端は日の出がとくに美しい」
そんな言葉が次々と出てきて
遠く霞んでいた記憶が鮮やかな色彩でよみがえった。
幼少期の私は 確かに そんな自然豊かな美しい場所に暮らしていたんだ。