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白熱の『星の王子さま』読書会
オンライン読書会「夜のアパート3号室」は第4夜を迎えました。
2025年2月8日(土)は『星の王子さま』を課題本に選びました。
先月の『モモ』に引き続き、児童文学の読書会となります。
今回の参加人数は9名。「耳だけ参加」が4名。
大阪や埼玉、宮城など、全国から集まってくれました。
まずは簡単な自己紹介のあと、
ひとりずつ作品を読んだ感想を聞いていきます。
みなさんの感想の一部をご紹介!
(記録係を引き受けてくれたせつこ。さん、感謝です!)
・20年前に読んだときは、バラの花を恋人の女性のように感じたが、自分が母となった今は、わがままな子どものように感じた。読むタイミングによって感じ方が違う。またいつか再読したい。
・ジブリっぽい。ラピュタの主題歌にも「星の王子さま」のような歌詞がある。宮崎駿のスピリッツにも影響を与えていると思った。
・小学生の時にハードカバーをおばあちゃんがくれた。さまざまな訳を読んできたけれど、倉橋由美子さんの訳が一番好き。王子さまの好奇心。悪意なく訊けるのは子どもの強みだと思った。
・この作品がロングセラーとして愛されている理由を聞いてみたかった。謎が解けるかも?と楽しみにしていた読書会だった。
・小学生のときに岩波のハードカバーを図書館で借りて読んだときはピンとこなかったが、新潮文庫版を読んで印象が変わった。かわいらしい王子様だと感じた。有名な「大事なものは目に見えない」はあまり胸に染みなかった。
・サン=テグジュペリの『夜間飛行』『人間の土地』は素晴らしい。サンは、戦争に対してはアンチで、人にとっての利、人間全体の利を何よりも優先していた。
・人は「知る」ことによって、好きになる。王子さまを「知っている」からこそ、本当に好きと思える。
・この作品は、現代人が気づけなくなった「当たり前のありがたさ」を伝えてくれていると感じた。
・王子さまは「純粋」の象徴だと思った。献辞にあった「レオン・ヴォルト」を調べてみた。レオンはけっこう年上で、作者と懇意にしていた。時期的にファシズムのように受け取れるところもある。アメリカに亡命したサン=テグジュペリ。アメリカが昼のとき、フランスは夕方…。フランスの友達は戦下で苦しんでいる…など、「戦争」というキーワードに引っ張られて読んでしまった。
・王子さまが「羊を描いて」とお願いする場面。たくさんの羊を描いたが、王子さまは納得せず、「箱の中にいる羊」に納得したのはなんでだろう?
・バオバブがファシズムの象徴と言われている。サン=テグジュペリの『人間の土地』は、砂漠に着地して、「もうだめかも。水が飲めない。砂漠にきつねや鳥の足あとがあったら、水が飲める…」という話。飛行機に携わっていた当時の人たちは、技術に命をかけていると感じた。『夜間飛行』では、戦争に対してはアンチ。国のために命を落とす感覚はない。人類の利になるなら……という思いがある。
・子どもらしい純粋無垢さを感じつつ、たまに複雑な葛藤があったり。他の参加者が言っていたように「こどもを演じている」ように感じた。あとがきを読んで作者がどういった人物だったのかを知ると、パイロットとして世界中を飛び回りつつ社会的な役割を全うしていたり、他の本も現実的なメッセージ性のあるものであったりして、サン=テグジュペリは結構リアリストではないかなと思った。でもこの本を読んでみると、一方で純粋無垢さとか見えない絆への憧れや理想を感じたので、作者の願望をめいっぱい表現したものなのかなと思った。そう考えると、そういった時々ある違和感みたいなものは作者のリアリスト面が出ちゃった感じなのかなと勝手に思った。
・深読みできる作品。ジブリ作品も、子ども向けのように見えて、深読みするといろいろな解釈ができるものが多い。観る側、読む側が自分の意図を汲みたくなるような作品で、ロングセラーになったゆえんなのではないか。見えるものを簡単に受け取らないという感じ。
などなど。
一人ずつの感想を聞いた後は、フリートーク。
他の人の感想を聞いて思ったことや感じたことを自由に話していきました。
皆さんのお話を聞いていると、
ここまでおとなたちが熱く語り合えるのは、
長く読みつがれる名作だからこそなんだろうなと感じました。
『モモ』もそうでしたが、子どもの頃には理解できなかったり、あまり響かなかった作品が、おとなになって再読してみたら、
その意味に深く感じ入ったり、だれかと語り合ったりできる……。
なんてゆたかな読書体験なんだろう!と感じました。
10年後に同じメンバーで読書会をやったら、
ぜんぜん違ったものになるのかなと、思いを馳せたりしました。
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました!
さて次回は、3月8日(土)21時から。
課題本は、
『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』
井上荒野 著
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また皆さんと語り合えるのを楽しみにしております!
(ありがたいことに満員御礼になってしまい、「耳だけ参加」受付中です)
読書会アパート3号室
サリー